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大崎仁氏(国立学校財務センター所長)の挨拶
(2000.2.25[he-forum 636] 大崎仁氏(国立学校財務センター所長)の挨拶)
大崎仁氏の下記の文章を入手しました。
大崎氏は、『大学改革 1945〜1999』(有斐閣、1999年11月)の著者で、文部省出身、日本学術振興会の理事長等を歴任しています。
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大崎仁(国立学校財務センター所長)
国立学校財務センターも二〇〇〇年という大きな節目の年を迎えることとなりました。
ご承知のように当センターは、国立学校財産の有効活用の促進等を通じて国立大学等の教育研究環境の整備充実に寄与するとともに、大学の財務等に関する研究を深め、国立大学の運営の改善に貢献することを任務といたしております。
この任務を果たしていくためには、これまでの業務を着実に進めていくことが基本でありますが、新しい年を迎えて、二つの新しい課題に取り組むことといたしております。
その一つは、当センター東京連絡所の学術総合センターへの移転に伴うものです。
東京連絡所はこれまで、永田町の合同庁舎内におかれていましたが、二月中旬から旧一橋大学講堂跡に建設された学術総合センターに移ることになりました。この機会に研究部を千葉市の本部から東京連絡所に移すことにいたしております。東京連絡所は国有財産関係の仕事を担当する企画課に加えて、研究部の活動の中心的拠点となります。
移転に伴い、学術総合センターの一橋記念講堂および中小の共用会議室の管理を、当センターが引き受けることになりました。これらの施設を、大学学術関係者の活動拠点としてご活用いただけるよう管理運営に当たりたいと考えております。学会、研修会、研究会等各種会合に積極的にご利用下さるよう、よろしくお願いいたします。
いま一つは、国立大学の独立行政法人化問題の検討への貢献であります。
ご承知のように、昨年四月二十七日に閣議決定された「中央省庁等改革の推進に関する方針」により、多くの国立機関の独立行政法人への移行が決まりました。しかし、国立大学については、「国立大学の独立行政法人化については、大学の自主性を尊重しつつ、大学改革の一環として検討し、平成十五年までに結論を得る」という慎重な決定が下されました。さらに昨年九月二十日に、文部省は、国立大学長・大学共同利用機関長会議を開催し、次のような趣旨の見解を明らかにしました。「現在の独立行政法人通則法は、自主性・自律性と自己責任を基本とすべき国立大学の特性を踏まえていないので、特例措置が必要である。特例措置等の具体的方向について、国立大学等関係者の意見を聴きながら、平成十二年度のできるだけ早い時期までに結論を得たい。制度の詳細については、十分に時間をかけて慎重に検討する必要がある。」
いずれも大学の特性を配慮した決定であり、文部省はじめ関係当局の良識に、敬意を表したいと思います。
国立大学の設置形態の変化は、国立大学への奉仕を使命とする財務センターのあり方に直接係わってくることはもちろんですが、国立大学にとって、占領下の大学改革以来の重大問題であり、その成り行き如何が、国立大学の将来を左右すると言っても過言ではありません。
当センターでは、この重要問題の検討に少しでも貢献したいと考え、昨年七月、「大学の設置形態と財務に関する比較研究」を開始いたしました。
欧米主要国の大学の設置形態と管理・財務システムおよび我が国国立大学の財務・会計システムについて調査研究し、その成果を独立行政法人化問題検討の参考に供しようというものです。
文部省、日本学術振興会のご支援を得、また当センターのスタッフのほか、多くの研究者、専門家の方々に研究委員会委員あるいは客員研究員としてご参加をいただき、研究は順調に進捗しております。
新年度予算案においてこのプロジェクトの研究経費が正式に認められましたので、本格的に調査研究を推進したいと考えております。
もっとも、「十二年度のできるだけ早い時期までに結論を得たい」とする文部省の方針を考えると、基本的問題については、あまり時間的余裕がありません。一月中にも、これまでの成果をとりあえず中間的にとりまとめ、関係の皆様のご参考に供するつもりでおります。
独立行政法人化についての検討がなかなか深まらないのは、国立大学「法人化」の適否と国立大学の「独立行政法人化」の適否とが、混同されて論じられているためと思います。「独立行政法人」は、極めて特殊な法人類型であり、法人化一般の論議と別次元のものと考えないと混乱します。中間的とりまとめに当たっては、独立行政法人化の検討を混迷させている一般の誤解を解くため、特に次の三点を明らかにしたいと思っております。
1 欧米の大部分の大学は、法人格を持っているが、同時に国公立機関である。大学が法人格を持つことは、いわゆる「民営化」とは全く関係がない。
2 欧米の大学の法人システムは、大学の基本法制の中で、大学の自治的運営を尊重して制度化されており、独立行政法人的法人類型を大学に適用するような方式を採っていない。
3 イギリスの「エージェンシー化」による改革は、イギリスの大学とは全く無関係である。また。「エージェンシー」は、行政機関であり、法人化とも無関係である。
国立大学にとって、従ってまた国立大学に奉仕すべき国立学校財務センターにとって、本年最大の課題は、独立行政法人化問題への適切な対応であります。当センターは、そのために必要な調査研究を最重要課題として推進し、国立大学の将来のため少しでも貢献したいと念じております。それがまた、当センターの将来のあり方にも結びつくものと考えます。
新しい年のスタートに当たり、これまで当センターにお寄せいただいた暖かいご支援に厚くお礼申し上げますとともに、一層のご指導ご鞭撻を心よりお願い申し上げます。