独行法反対首都圏ネットワーク |
Quandoの解説と参考文献
(2000.2.17 [he-forum 621] Quangoについて)
こんにちは。初めて投稿いたします。山口大学の事務官の三原といいます。
he-forum 613 でQuangoのことが指摘されていましたので、興味をもち、立命館大学の小堀先生にQuandoの解説と参考文献について質問をだしたところ、下記の回答をいただきました。ご本人の了解を得ましたので、当MLに転載いたします。
以下転載
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立命館大学の小堀です。メールをいただきありがとうございます。MLで話題に上ったとは知りませんでした。
ご指摘のQuangoですが、残念ながら日本語で紹介されている文献は、おそらく私の「英国における政府の説明責任と特殊法人について」(大西弘・神谷章生編『新世紀市民社会論の課題』一九九八年大月書店)くらいでしょう。エージェンシーに関する論文は、「行政管理研究」なんかをみれば、おそらく95年以降でも10はくだらないくらいたくさんあると思いますが、似たような組織であるにも関わら
ず、片方は日本では脚光を浴び、片方はほぼ完全に無視されていると言うのは本当に奇妙なことです。ところで、Quangoは、英和辞典などにも載っていますが、日本語訳すれば、特殊法人です。
英国では、Quango問題は94年頃に脚光を浴びています。英国の一般の人はともかく、政治学者や政治家なら誰でも知っている問題です。でも、日本ではエージェンシーはたくさん紹介されているのに、それとは双生児にあたるQuangoの問題はほとんど紹介されていません。
手前みそで、非常に恐縮ですが、日本語でまず知識を得るということであれば、上記の私の論文を読んでみてください。ただ、あれを書いた98年の段階では、率直に言って日本で英国の文献を読んでいるだけではわかりにくい点があって、そこを若干ぼかして書いてあります。それは何かと言うと、エージェンシーとQuangoを峻別するメルクマールは何かということです。
実は、今英国にいてその点も含めて中心に勉強しているわけです。Quango問題の専門家でQuangoという名前を82年に提唱したAnthony Barkerという先生がエセックス大学にいるのですが、その先生にきいてみたところ、とにかく最も端的な違いは、エージェンシーは省庁の下にあり、法的に省庁から独立しておらず、構成員も国家公務員であるというのに対し、Quangoは省庁から、ないしは地方政府から法的に独立しており、構成員も国家公務員ないしは地方公務員ではないということでした。それゆえ、Quangoは大臣責任制という英国行政の伝統的な責任体系においてもその内部を問うことができず、ブラックボックスになってしまっているという話です。
日本のエージェンシー、これについては、昨年の8月から英国にいるので三原さんの方が良く知っているかもしれませんが、少なくとも、日本の場合は郵政の新型公社でも大学でも別法人になるという点で、すでに英国とは違います。大学の場合は、国家公務員の地位は変わらないということですが、新型公社の場合は国家公務員でなくなるという点でも、英国のエージェンシーとは違います。
ただ、英国において共通の議論になっているのは、エージェンシーにせよQuangoにせよ、議会の統制から外れ、その結果腐敗の温床になるのではないか、また事実なってきたという点が問題になっています。ですから、そのBarker氏によれば、エージェンシーも大臣責任制の下にあるにもかかわらず、Quangoと同じように、議会を通した国民の監視から逃れているということが問題にされています。この点、効率性と公費の節約ばかりを念頭に置いた日本の改革とは、視点がそもそも違うのかもしれません。事実、英国では、行政改革admistrativereformということばはなく、憲政改革constitutinal reformという言葉が使われています。
すこし長くなりましたが、そういうことで、あとは英語の参考文献を挙げておきます。たくさんあるのですが、問題性を一番理解するには、以下の二つをあげておきます。
Stuart Weir & Wendy Hall, EGO TRIP (Democratic Audit, ISBN 1 873311 31 1)報告書でたくさんのデータが載っていますが、読む部分は多くない。包括的なQuango問題の要約をしることができます。
Stuart Weir & David Beetham, POLITICAL POWER AND DEMOCRATIC
CONTROL IN BRITAIN(Routlege, 1999)
巨大な本ですが、Quangoとエージェンシーの部分が集中している8章Agent of Powerだけでも読んでみるといいと思います。ここに、エージェンシーとQuangoの関係が一応書いてあります。
他は、amazon.comなどで検索すれば、たくさん出てきますが、上記のものを読むのが全体像をつかむ上で一番手っ取り早いと思います。また何かあれば、メールをください。時間のある限りで、答えます。