独行法反対首都圏ネットワーク

小堀眞裕氏のHPより「日本の大学とエージェンシー」
(2000.2.16 [he-forum 613] Masahiro Kobori's Home Page)

立命館大学法学部小堀眞裕氏(イギリス現代政治)のページより

 http://www.asahi-net.or.jp/~YE9M-KBR/

日本の大学とエージェンシー

 現在、日本の国立大学をめぐっては、それをエージェンシー(独立行政法人)化するという方向が強まっていますが、これにも同様の傾向があると言えます。

 もし、大学をエージェンシー化しても、市場原理も提供する側の競争も消費する側の選択もほとんど限定的にしか機能することはないでしょう。なぜならば、大学は競争して良い教育を提供したからといって、どんどん利益が上がっていく業種ではないからです。たとえば、これが何かのメーカーであったら、どんどん利益を上げてシェアを拡大していけるでしょう。でも、そんなことが大学で可能か?答えはノーです。第一、文部省が許認可権を持っている限り、支店(大学)を出すことさえままなりません。では、政府の許認可権を取っ払ってまでも、市場原理を導入する必要があるか(うちの大学の経営者が聞いたら喜ぶかもしれませんが)?これにも、疑問符がつきます。

 ちなみに、現在日本で検討されているエージェンシーは、厳密な意味では英国のエージェンシーには該当しません。なぜなら、日本のエージェンシーは独立法人化することが半ば決定されており、身分も国家公務員でなくなる可能性もあるからです。英国のエージェンシーは、構成員の身分は国家公務員で独立の法人ではありません。そういう意味では、日本のエージェンシーは英国で言うQuangoにあたるといってよいでしょう。しかし、このQuangoは、英国では非常に評判の悪い代物です。このことを、なぜ日本の行政学者は誰も何もいわな
いのでしょうか?

 英国では労働党政権に変わっても、たしかに大部分のエージェンシーは引き継がれており、今度はロンドンの地下鉄も部分的民営化が検討されています。しかし、公的な分野のどこに市場原理を導入するかと言う点では、保守党政権(とくにサッチャー政権)下での教条主義的市場原理導入方針は廃棄されているように思われます。例えば、医療の分野において、サッチャーが導入した家庭医(GP)への競争原理の導入はブレア政権の下で廃止されているのが、その一例です。

 これからの日本においても、英国からエージェンシーの成果を学ぶと言うのであれば、それを教条的に摂取するのではなく、本当にそれが適合的かどうかを考える必要があるように思われます。例えば、原子力や教育のように、民営化手法を導入しても、競争が確保できない場合も存在するわけですから。



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