独行法反対首都圏ネットワーク

国立大の「大学院重点化」
エリート養成の核へ選別(2/7東京新聞解説)
(2000.2.7 [he-forum 585] Tokyo Shinbun 02/06)

『東京新聞』2000年2月6日

かいせつアベニュー

国立大の「大学院重点化」
エリート養成の核へ選別

文部省は国立大学の大学院重点化を十二大学で打ち切りました。総合大学を中心に、多くの大学が重点化を希望していましたが、旧七帝大と一部有力大を除いては、かないませんでした。打ち切りの背景には、ひっ迫する財政事情以上に、重点化大学を名実ともエリート養成の核にしたいという文部省の意向があるようです。(社会部・加古陽治)

学部教育が中心だった大学を大学院教育と学術研究中心の「研究大学」にすること、これが「大学院重点化」です。具体的には、学部に所属していた教官を大学院所属に移し、学部の教育も合わせて行います。最近、大学教授の名刺が「○○大××研究科教授」となっていることが多くなりました。こうした教授が大多数を占める大学は重点化した大学です。

重点化にはメリットがあります。「積算校費」と呼ばれる、各大学一律の基準で配分される予算が、約二五%増えたからです。積算校費の四分の三を占めていた教官ごとの配分は、「実験系」と「非実験系」の別のほか、(1)博士課程(2)修士課程(3)学部―の所属別でも基準額が違いました。

重点化すると、多くの教官の所属が「学部」から「博士課程」になります。それだけで基準額が上がりますから、配分が大幅に増えるわけです。重点化大学は、さらに定員の大幅な増加も認められました。

 第一号は一九九一(平成三)年、東京大の法学政治学研究科でした。翌年、京都大でも始まり、北海道、名古屋など旧七帝大の残りと、東京工業、一橋、東京医科歯科、神戸、広島の各大学で、全学的または一部の研究科の重点化が始まりました。一部は新年度までかかりますが、それで重点化は終わりです。

十二大学が「選ばれた」のは、文部省がこれらの大学は他大学と異なる存在に位置づけているからにほかなりません。同省は「それまでの大学院教育や研究の実績などから決めた」(大学課)としていますが、旧七帝大から始まる、旧来の序列を踏襲して大学を「種別化」したと見ることもできます。

文部省は、来年度から教官ごとの予算配分を「非実験系・修士」基準に統一しました。このため予算増をともなう重点化はなくなりますが、大学院の拡大は続ける方針です。大学審議会の答申でも「今後大学院の規模の拡大に重点を置く必要がある」と指摘しており、院生がこれからも増えるのは確実です。



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