独行法反対首都圏ネットワーク |
トップダウンで自治瓦解へ!
教授会審議抜きの新評議会規則の決定
(2000.2.3 [he-forum 580] Niigata Univ)
新潟大学における新評議会に関する組合そくほう版原稿です。
新大職組委員長 立石 雅昭
トップダウンで自治瓦解へ!
教授会審議抜きの新評議会規則の決定
1月14日,新評議会設置準備会は本年4月からの新評議会の発足に向け,新しい評議会規則を定めました。同時に新評議会構成について学長指名枠を決定しました。各学部教授会での審議を経ずに決定した経緯とその内容は自治の本旨にもとる決定だといわざるを得ません。
第1に、この「評議会規則」案については12月17日の新評議会設置準備委員会で原案が示されて以降、1月14日に決定されるまでに学部教授会での審議が実質的には全く行われませんでした。これは昨年5月成立を見た「学校教育法等の一部改正」に記された、全学的課題に関しては評議会で審議し、学部教授会は学部の教育研究に関わる重要事項の審議に限定する、というそれぞれの役割・権限を一方的に適用して進めたものです。新潟大学における評議会審議事項や学部教授会審議事項の議論・改正が行われるまえに、それを適用して進めたということになります。法案に関する国会審議の過程で、本法案が学問の自由と大学の自治を脅かす危険性が指摘され、討論の結果、付帯決議として全学的事項を含めた教授会審議が可能であること、とうたわれた経緯を全く無視したものといえます。
次に、まだ検討中にすぎず、内容の不明確な専門部(教育・財務・法務・就職)の担当特別補佐4名(学長選任)が、点検・評価委員会委員長(学長選任)、医学部附属副病院長ともども評議会の議に基づく学長指名評議員とされ,2月末までに特別補佐と点検・評価委員会委員長が選任されることとなりました。教育研究・医療の実質的な推進母体である部局選出の評議員を減じ,その分,こうした学長選任評議員枠をもうけたことは,「責任ある意志決定と実行」の名の下に学長の権限を強め,部局教授会の意見や要望を軽視する体制作りです。専門部の内容と組織はこれから詰めるということでしょうが,それらが規定される前にトップだけが決められる,というきわめて異常な形で進行しつつあるといえます。なお,大学改革ワーキンググループ(D)から提案された「大学運営の組織と副学長制に関する試案」に盛り込まれた専門部担当者としての3名の副学長増や専任特別補佐などは今後,概算要求も含めて実現が図られていくものと見られます。
政府・文部省、財界への迎合は自治に値しない。
今回の評議会規則の決定過程は、昨年初頭に提案された「討議資料ー学際的基幹大学としての新潟大学」(緑本)の一人歩き状態以来の動きや日の丸・君が代の取り扱い通知を合わせ考えれば、新潟大学における自治が極めて危機的状況におちいっていることを示しています。わたしたち新潟大学構成員が改めて大学の自治とは何かを考え、自治の再生のために学内討議を巻き起こしていくことが求められている、といえます。
自治は大学における学問の自由を守り、支えるために築かれてきました。
新しい憲法のもとで、なぜ学問の自由がうたわれ、保障されることになったのか。このことを今一度考える必要があるのではないでしょうか。戦争中、学問の府としての大学が時の政治権力や財界の思惑に沿って動いた(動かざるをえなかった)事への痛切な反省から学問の自由が憲法にうたわれたことを想起しなければなりません。大学における教育と研究は、時の政治権力や財界の圧力からは独立して、学問の論理にしたがって進める自由として勝ち取られたものです。この学問の自由を守り発展させる具体的な道として、大学の自治が築かれてきました。
一方で、学問の自由とそれを実際に発展させる道としての大学の自治は必ずしも平坦な道を歩いてきたわけではありません。自治を形骸化し、学問を大企業・財界の要望に隷属させようとする策動との闘いでもあります。新潟大学の50年の歴史にも、先学・先輩諸兄のそうした闘いの歴史が刻まれています。学問の自由を守ることは国民から大学人に負託された権利であり、同時に責務でもあります。
学問の自由とそれを支える大学の自治の概念とその歴史を見れば、文部省・大学審議会の方針に無批判に従い、迎合することによって大学としての生き延びを計る道は、自治をつき崩し、しいては学問の自由、大学における教育・研究・医療を権力・財界の意向に隷従させるものといえます。
求められているのは教育と研究・医療の実質的改革
大学の自治の今一つの重要な側面は、大学構成員には教育と研究・医療を学問の論理に従って発展させる重大な責任が課されているという問題です。新しい世紀を目前にして世界の政治・経済、人口、食糧、環境と開発、文明、南北問題など、グローバル、かつ地域的な問題が人類的課題として提起されるにいたっています。こうした課題に対して、大学における教育と研究・医療はどうあるべきかが鋭く問われています。課題解決に向け、大学人が英知を結集し、創造的に教育・研究・医療体制を築いていくことが求められています。大胆な改革も必要です。現在の教育・研究・医療は基本的には部局を単位として進められています。この進め方に問題があれば、改編する全学的な議論も必要でしょう。しかし、それは組織いじり、しかもトップダウン体制をいかに築くかに終始している現在の改革論議の進め方とは大きく異なります。現在の教育・研究・医療の進め方、内容に関してどういう課題があるのか、どういうふうに改革していくことが望ましいか、支援機構はどうあるべきか、議論を提起し、意見の一致を見たところから実行していくことが求められています。しかし、こうした改革が実るためには決定過程にどれほど学内論議が保障されたか、が重要です。学内討議の保障のないトップダウンでは改革が実りを上げることはのぞめません。また、こうした改革を具体的に進める上で、大学構成員としての職員の意見や要望をとりあげる事も重視されなければなりません。
改めて、今、新潟大学で求められている改革はどのように進めなければならないか、全ての教職員が論議を深められることを切望します。