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ミニ時評/
山梨大と山梨医大 国立大統合の先駆けか(1/24朝日新聞)
(2000.1.24 [he-forum 559] Asahi Shinbun 1/24)

『朝日新聞』2000年1月24日朝刊

ミニ時評

山梨大と山梨医大 国立大統合の先駆けか

有吉 由香 (甲府支局)

国立の山梨大と山梨医科大が共同で大学院研究科を設置する検討を始めた。山梨大の椎貝博美学長は「大学院の設置はお見合いみたいなもの。共同で研究をしてみたうえで、統合できるのなら一番いい」と、両大の統合も視野に入れていることを明かした。
山梨大は教育人間科学部と工学部をもつ。山梨医科大は医学部だけの単科大学だ。共同研究の分野はまだ決まっていないが、医療用ロボットの開発や地域医療などの学際的な研究が考えられる。新たな研究科が設置されれば、学生にとっては研究の選択の幅が広がる。
椎貝学長が「統合」にまであえて言及した背景に、国立大学の独立行政法人化が検討されていることがあるのは間違いない。統合すれば財政面で利点がある。学長や事務局長が一人になるうえ、両大の場合、工学と医学という特許や病院分野などで「稼げる」学部が、教育という「稼ぎづらい」分野を補えてバランスがいいという。
独立法人化を迫られる国立大学が心配することの一つに、文学・哲学・教育など稼ぎづらいが重要な分野をどう守るかということがある。学問研究の自由に加え、大学の規模や環境に応じた正当な評価が受けられることが保証されれば、椎貝学長は独立法人化を受け入れてもいいという。地方の大学が東大や京大と同列に業績を比べられても困るという学長の懸念は、ほかの地方大学も同じだろう。
国立大学は全国に九十九ある。山梨医科大のように、医大がない県をなくそうという国策で作られた医学部の単科大は十一。学生数の減少で再編を迫られる時代は近い将来確実に来る。一九四九年に新制の大学制度になって以来、国立大学同士の統合は例がない。全国の先駆けになるのかどうか見守りたい。



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