独行法反対首都圏ネットワーク

新潟大学学長 年頭あいさつ
(2000.1.21 [he-forum 553] 新潟大学学長あいさつ)

年頭にあたっての学長あいさつ
平成12年1月4日 賀詞交歓会にて
場 所 新潟大学大学会館

荒川正昭学長

 明けましておめでとうございます。平成12年,西暦2000年の年頭にあたり,一言ご挨拶申し上げます。

 最近の国立大学を取り巻く状況は,大きくまた急速に変わりつつあります。今私たちは,この動きを冷静かつ的確に認識して,自らの進むべき道をさぐり,急ぎすぎることなく,しかし遅れることなく,一つ一つの方策を実行していくことが大切であります。

 一昨年,大学審議会より,二十一世紀における国立大学の在り方について答申が出され,昨年5月には関連する法令等も改正されました。昨年は,新制国立大学が創立50周年を迎えた節目の年でもあり,この年に国立大学の新しく進むべき方向が示されたことは,象徴的な事でもあります。

 この答申では,大学の基本理念として,若者の課題探求能力を育てること,このための教育研究システムを弾力的に改めること,責任ある意志決定と実行ができる体制を考えること,多元的な評価を行いつつ個性ある大学をつくることが提唱されています。

 今回の法令改正に基づいて,今春から新しい評議会,教授会が発足し,また学外有識者による運営諮問会議が設けられ,学長の諮問に応じて審議し,学長に対して助言又は勧告を行うことになります。さらに重要なことは,国立大学の教育,研究,社会貢献,組織運営などについて評価する第三者機関として,学位授与機構の中に大学評価機関が設置されることであります。この評価の結果は,資源配分の参考となることが明らかにされています。また,この資源配分については,新年度の校費配分のうち,30%のみが従来のような配分であり,70%は各大学が独自の判断で配分することになりました。この配分自体が,評価の対象となるものであり,私たちは真剣に考え,対応しなければなりません。

 一方,国の機関の独立行政法人化(独法化)については,当初国立大学もその対象として議論されましたが,平成15年までに結論を出すことになりました。しかし,これまで独法化に反対してきた文部省は,昨年10月臨時の国立大学長会議を開催し,(1)現在の通則法による独法化には反対であるが,(2)もし,独法化が避けられないならば,どのような条件が必要であるかについて検討することを,明らかにしました。これより少し前に,国立大学協会の第一常置委員会でも,独法化が避けて通れない場合,どのような条件が必要であるかを検討し,中間まとめを発表しました。文部省が検討している内容は,この中間まとめと大筋において一致しています。昨年末の国立大学協会総会では,会長談話の形で,(1)現在の通則法による独法化は反対であること,(2)さらに,今一度原点に返って,我が国の高等教育の在り方を考える必要があることを,明らかにしました。しかし,一方において,第一常置委員会に独法化検討小委員会を設置して,引き続き独法化について検討することになっています。また,文部省としては,今春までに独法化について結論を出すとのことであります。

 私たちの大学では,一昨年の大学審議会の答申(中間まとめ)が公表された時より,評議会の了承のもとに,各種委員会が合同してワーキンググループをつくって,二十一世紀における新潟大学の進むべき方向について検討し,昨年1月に学内検討資料として「学際的基幹大学としての新潟大学―日本と地域の未来のために―」をまとめました。このまとめは,現時点における本学の将来計画の一つの具体案と言えますが,以来,このまとめに述べられている提言にそいつつ,事態の進展を分析しながら,具体的な大学改革の作業を進めてきています。

 また,昨年夏には,部局長会議のなかで勉強会を行い,各部局長が分担をして他大学の事情を視察してまいりました。ついで,大学改革ワーキング・グループを設置して,私たちの大学の在り方について具体的に検討しています。その内容については,随時みなさんにお伝えしています。さらに,本学独自の考えにより,若手の教授による学長補佐会議を設け,本学の将来像について検討していただき,大胆な提案を大学改革ワーキング・グループに提示してもらっています。

 私は,二十一世紀における新潟大学は,我が国における学際的基幹大学として発展してほしいと,心から願っています。私自身の母校でもある新潟大学が,次代を担う有為な若者にとって,魅力ある大学であってほしいと思い,全力をつくして最後のご奉公をする決意であります。

 具体的な目標としては,第一に,人文社会科学系,教育科学系,自然科学系,生命科学系の大学院の整備充実であります。今年の大きな目標は,現代社会文化研究科の区分制と医・歯を中心とした生命科学系の部局化,重点化であります。このことは,必ずほかの二つの学系の大学院の一層の発展にも寄与することと思います。現在,関係する皆さんが文部省に説明していますが,学際的な研究を進めるための教員組織の在り方が問題となっています。私は,大学全体の教育・研究者集団として考えることが必要ではないかと思います。このことについては,すでにいくつかの大学の具体例もありますが,本学のよりよい在り方を検討したいと思っています。

 第二は,学部の一層の充実であります。大学院の重視は,決して学部の軽視ではありません。本学は,幸いにも9学部を有し,広範な学問領域をカバーしています。このことは,幅広くかつ奥深い教養教育,専門基礎教育が可能であることを示しています。来年度,大学教育開発研究センターが省令施設として発足することが,公に認められましたが,同センターがその中核として活躍することを期待しています。現在,各部局において,教育研究の理念,目標,方策をまとめていますが,それぞれが特色ある教育研究を進めてほしいと思います。

 第三に,新潟大学は,新潟にある国立大学であり,したがって,新潟県を中心とした日本海沿岸地域の発展に貢献できる大学でありたいと思います。大学の個性化が叫ばれている現在,特色ある新潟の学術文化の研究に参加したいと願っています。

 第四に,私たちはより広く海外に目を向けて,新潟から世界に発信したいということです。現在,本学には300名をこえる留学生が学んでいます。この人達の母国は,全世界に及んでいますが,やはり北東アジア圏からの留学生が最も多いのであります。朝鮮半島,中国東北部,ロシア極東地方は,北東アジア圏あるいは環日本海圏と総称されていますが,新潟は地理的に日本における最も交流に適した拠点であると思います。これらの国々は,さらに中近東,中央アジア,ヨーロッパに連なっております。私たちは,この広い地域の学術交流に力を入れる必要があると思います。

 以上,新潟大学の将来像について,私の考えを述べましたが,現在の改革を進めるためには,今すぐにも運営組織の見直しが必要であります。部局長会議の大学改革ワーキング・グループで検討された結果,副学長とともに学長を補佐する立場の特別補佐が必要であることが提案されています。具体的には,(1)総務,企画,広報,(2)教育,(3)研究,(4)財務,(5)法務,(6)就職,(7)病院などの分野を担当するスタッフが必要であります。

 今ひとつ,中央の評価機関の評価に対応するために,新しい評価委員会が必要であることが,全学自己点検・評価委員会のワーキング・グループならびに大学改革ワーキング・グループから提案されています。大学評価機関では,各大学の外部評価も含めた自己評価をもとに評価することが示されており,公平,透明かつ厳正な学内評価システムの設置が必須であります。この学長の補佐体制や評価システムは,専任のスタッフが担当すべきでありますが,当面は兼任で発足せざるを得ないと思います。しかし,今春,新年度から実施することが,絶対に必要であります。

 私達の改革の歩みは,いささか急ぎすぎるのではとの声もあるかもしれませんが,多くの情報を整理し,他大学の事情を詳細に分析しますと,やや遅れているのではないかというのが,私の現在の実感であります。

 以上,新年にあたり,新潟大学を取り巻く諸問題と将来像について,私の考えを述べました。教職員の皆さんには,国立大学のおかれた現状は極めて厳しく,今まさに具体的な施策の実施が必要であることを認識してほしいと思います。これらの改革を進めるにあたり,現在国立大学のおかれている立場,多くの国民が私達に何を期待しているか,日本国内だけでなく,世界は私達をどのようにみているか,考えていただきたいのであります。私は,大学を発展させる原動力はやはり教職員の皆さんの熱意と努力であると信じています。私とともに,新潟大学の一層の前進のためにご尽力くださることをお願いして,私の挨拶といたします。



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