独行法反対首都圏ネットワーク

独法化で国立大再編時代
山梨大・医科大が統合検討(東京新聞1/12)
(2000.1.12 [he-forum 533] Tokyo Shinbun 01/12)

『東京新聞』2000年1月12日1面

独法化で国立大再編時代

山梨大・医科大が統合検討

少子化などで競争激化 実現なら初

山梨大(椎貝博美学長)と山梨医科大(吉田洋二学長)の二つの国立大学が統合を検討していることが十一日、明らかになった。既に両大学の代表十数人からなる委員会をスタートさせており、近くまとめる中間報告では、第一歩として連合の独立大学院の創設構想が打ち出される見通しだ。少子化や独立行政法人化など大学間の競争が厳しくなる要因が増すなか、統合による基盤強化を志向する大学はほかにもあるといわれており、両校の動きが国立大学再編のさきがけとなる可能性が浮上した。【解説26面に】
統合が実現すれば、国立大学としては一九四九(昭和二十四)年に新制大学が発足して以降、初めてのことになる。
複数の関係者によると、両大学は昨夏までに、統合に向けた検討を進めることで思惑が一致、検討委員会をスタートさせた。医科大はこれとは別に、学内に「統合の是非に関する検討委員会」を設け、作業を進めている。
両大学の委員会が年度内に出すとみられる中間報告には、学部と直接関係しない独立大学院を両大学が連合して設立する案などが盛り込まれる見通しだ。両大学ではその後、さらに学内で論議を深め、統合の是非について最終的な結論を出すことにしている。
関係者らは工、教育人間科学部の二学部しかない山梨大と医学部だけの山梨医科大が、統合で三学部になれば(1)教育や研究の幅が広がる(2)医学部の病院収入と工学部に入る研究資金などを合わせると、資金調達力が安定する―などの効果が期待できると話している。
一方、キャンパスが同一の敷地にないため、学生の移動が不便な点などがマイナスとなっている。
両大学の統合構想について、文部省大学課の合田隆史大学課長は「文部省から統合すべきだとはいわないが、検討を進めるのなら相談に乗りたいし、支援できることがあれば支援していきたい」と歓迎する意向を示している。

【解説】(26面)
山梨2大統合構想 生き残りへ独自色

山梨大と山梨医科大の統合構想は、地方の二大学の合併にとどまらず、全国の国立大学の再編へと波及する可能性を秘めている。(1面参照)
少子化の進展は、国立大といえども入学者集めに安閑としていられない状況を生みだした。行財政改革の流れのなかで浮かんだ独立行政法人化は、国立大により効率的な経営を迫っている。教育・研究の実績は学外の評価にさらされ、やがてそれに基づいて資金配分が進められる。学生一人当たり、といった一律の予算配分は次第に減らされるのが確実な情勢だ。
国立大学を取り巻く環境がこうして厳しさを増すなかでは、経営基盤を強化し、他とは違ったカラーを打ち出さない限り、地方の国立大や医科大などの単価大が生き残るのはなかなか難しくなっている。
山梨大と山梨医科大が統合を含む連携に向けた検討を始めた背景には、このような多くの国立大に共通する危機意識がある。まだ最終的な結論は出ていないが、たとえ統合まで行かなくても、連携を緊密にする方向でまとまるのは間違いないだろう。
近隣大学同士の統合を視野に入れている国立大の学長は、山梨の二人だけではない。西日本のある総合大学長は「昨年、近くの医科大の学長と統合話をしたことがある」と話し、関東地区の学長の一人も「具体的に動いてはいないが、統合については意識している」と言う。
戦後、新制大学がスタートしてから、国立大は増えたことはあっても、減ったことはなかった。今後、 山梨の二大学のほかに同様の検討を進める大学は続くとみられ、九十九大学が金融機関のように再編や提携を模索する時代の幕が開けたといえそうだ。(加古陽治)



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