独行法反対首都圏ネットワーク

農水省 野菜・茶業試験場ニュースより
(2000.1.7[he-forum 523] 農水省野菜・茶業試験場ニュースNo.59)

野菜・茶業試験場ニュースNo.59 1999 (1999.11)

視 点
独立行政法人雑感

 現今の社会の流れの変化はすさまじいものがある。世界に誇る経済大国として右肩上がりで成長してきた日本の社会はバブル崩壊を境に極めて重大な欠陥を抱えているとされ、大変革を果たさなければ国際社会の中で孤立しやがては衰退に向かうとされた。この認識の基に今までの価値観をゴミ箱に捨て180度転換した社会を創造しなければならなくなった。この大きなうねりの中において、国の試験研究機関や検査指導機関の職員にとって最も身近で直接的な問題が国の行政機関から切り離した独立行政法人化の問題である。

 この問題が起生した当初、世界広しと言えども英国に唯一の先例があるのみの独立行政法人について確たるイメージを描くのは極めて難問であった。2年有余の歳月をかけて通則法、個別法(秋の臨時国会)へと進み次には中期目標の策定が控えている現在、やっとその姿がおぼろげながら形となって現れてきたような感じで受けとめられる。

 先行きまだまだ難問も山積しているが、何はともあれ今後、独立行政法人組織がうまく機能し、移行機関が今まで以上の成果を上げて国民に対する貢献が増大する方向に組織員一丸となって試行錯誤を重ね努力する以外に道はない段階に到達したのである。

 とは言いながら公務員型の特定独立行政法人として位置づけされることにより何がどのように変化するのか頭の中は未だに混沌とした状態にある。ある時点までささやかれていた自らの努力と英知により研究資金を稼ぎだし、この資金により思う存分更なる研究活動が推進できるようになるんだというような夢物語ともいえる美味しい話は、最初から試験研究機関においては馴染まないものであり、特許や種苗登録等の研究成果による企業的利潤を期待するのはもともと困難であると考えてはいたものの、国の資金による運営となった現状の動きの中ではどうやら関係が薄い感じとなってきたように思える。

 となると、研究者の立場からみた独立行政法人化のメリットをどこに求めたら良いのだろうか? 研究活動の推進に求められる根元的な理念の一つとして、自由な環境の中で研究者個々人の発想が活かされることが出発点であり、研究管理者を含めた周囲の関係者がどう研究者を指導しサポートできるかが鍵であるというような信念があり、素晴らしい果実に結ぶ原動力であると考えられるが、このことがどう新しい方式の独立行政法人に受け継がれ、重視され、推進されるかは独立行政法人の成否に関わってくると思われる。

 このためには、組織運営の柔軟性、機動性が確保できるかが重要であり、独立行政法人化により確実に期待され得る改善点ではないかと考えたい。研究組織も現状では硬直的であり、煩雑であり、機動性に欠ける部分が多い。

 ただ、この問題は一方で強化される評価の問題と強く関連してくるものであり、評価の問題が今後の独立行政法人の将来において最大の検討事項となるのではないかと思われる。独立行政法人においては組織、研究課題、研究者と各段階において今までにない厳しい評価が行われることになるだろう。

 評価問題は先般の科学技術に関する行政監察において執拗とも思えるほどの監察の対象となったが、監察官から指摘されるまでもなく、評価には一評価が正しく行われたかどうか、二評価結果がきちんと取扱われ改善に役立てられたかどうか、の問題点がある。

 客観的かつ公平な評価方法による正しい評価結果に基づいた適正な研究資源の配分を行うことができるのかどうかが独立行政法人が有効な組織として機能するかどうかの一つの重要な鍵であるように考えられる。
(久留米支場長・岩永喜裕)


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