独行法反対首都圏ネットワーク

起承転々… 独立行政法人化揺れる佐大 (12/27佐賀新聞)
(2000.1.3[he-forum 519] Saga Shinbun 12/27)

起承転々… 独立行政法人化揺れる佐大

掲載日1999年12月27日 <自>写有

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〈独立行政法人化揺れる佐大〉

 国立大学が行政スリム化の一環である「独立行政法人化」に揺れている。文部省は「反対」から一転「検討」へ方針転換。法人化への流れが一気に加速した。
 佐賀大学では「大学存亡の岐路」と教職員組合を中心に反対の動きが広がるが、法人化後の具体的な姿はいまだはっきりしないまま。学内には不安といらだちが募っている。
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 「独法化は民営化への第一歩。そうなれば地方の国立大学は消滅してしまう」―。十一月六日、佐大で開かれた「地方国立大のあり方」をテーマにしたシンポジウムで、理工学部の中島謙一教授は国立大独法化への強い危機感を訴えた。

 シンポは大学教授らでつくる日本科学者会議佐賀支部の主催。一般市民を含む約六十人が参加して大学の今後を考えたが、参加した佐大関係者からは「大学の自治を侵害する」「私大を含めて授業料の高騰を招き、教育の機会均等を損なう」など独法化に反対する声が相次いだ。

 佐大に限らず、国立大の独法化への拒否感は強い。原因は「効率性」を追求する同法人の性格。これが「多様な教育研究を行う大学にふさわしくない」(九七年の国大協声明)と主張する。

 今年七月に成立した独立行政法人通則法によれば、同法人は大臣の定める目標に基づく中期計画で運営される。だが、教育研究という「計りにくいもの」を扱う大学で、何を基準に目標や計画を決めるのか、大学関係者は疑問視する。

■「中身分からず」

 佐大の佐古宣道学長は「九月に示された文部省案でも中期目標の中身は分からなかった。基本的なところが不明なままで賛否を問われても困る」とぶ然。
 基礎的な研究分野が大学から排除される懸念を持つ研究者も多い。化学を専攻する中島教授は「理工系の場合、成果は論文の数や特許数が目安になるのだろうが、理論物理学や数学などは五年くらいで成果を出せる研究分野ではない」と指摘、「経済効率で基礎研究の芽を摘んでいけば、結果的に社会の損失になる」と強調する。

■反対の署名活動

 佐大教職員組合は、全国の大学教職員組合と呼応して独法化反対の署名活動を進める。委員長の富田義典・経済学部教授は、授業料アップや教育水準の低下などの問題点を挙げて「独法化は大学だけの問題ではない」とアピール、論議の広がりを期待する。
 ただ一方で、「独法化は避けられない」と、流れの中での生き残りを模索する向きもある。事務官の一人は「現状を守ろうとばかりしても、結局は政治に押し切られる」といい、例えば佐賀医大との合併など「大胆な改革に自ら乗り出すべきではないか」という。
 国家公務員の削減問題と絡んで、「進むも地獄、とどまるも地獄」と大学人を嘆かせる独法化。文部省は「来年度の早い時期に結論を出したい」としている。(谷口伸二)
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 独立行政法人 政府が行政機関スリム化の切り札とする制度。各省庁から事務・事業分野の業務を分離し、企業会計原則を導入して効率化を図るもので、国立博物館など五十九機関を独法化する法案が国会に出されている。国立大学の法人化は当初、文部省の反対もあって結論が先送りされていたが、小渕内閣が国家公務員の大幅削減方針を打ち出したことで今夏再浮上。九月には文部省が、大学の特殊事情に配慮した特例措置を条件に法人化を検討する案を発表した。



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