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財界系の研究所が警鐘(しんぶん赤旗12/27)
(1999.12.29 [he-forum 517] 財界系の研究所が警鐘(しんぶん赤旗12/27))
佐々木(東職書記長代行)です。
しんぶん赤旗 12月27日1面 トップ記事の重要性の指摘がありましたので、全文電子化しました。
また、報告書の概要と全文の入手方法の情報提供ありましたので、紹介いたします。
報告書の概要は下記で入手できます。
http://www.jpc-sed.or.jp/mhr/mhr07.htm
全文は、そのページの末尾に連絡先が書いてありますので、そこに問い合わせてみればいいと思います。
<ここから、しんぶん赤旗記事>
人減らしで無気力や不安感深刻
人間関係や仕事に影響
企業再生にならない
財界系の研究所が警鐘
「従業員の減少は、従業員の無気力を増長し、精神を不安定にさせる。従業員では企業の再生はありえない」−。財界系のシンクタンク、財団法人・社会経済生産性本部のメンタル・ヘルス研究所が、こんな調査結果をまとめていることがわかりました。日産自動車の二万一千人をはじめ、大企業の人減らしに警鐘を鳴らすものとして注目されます。
同研究所は、従業員に心の健康度向上のためのプログラムとしてJMI健康調査(メンタルヘルス診断)を実施しています。
今回、企業の経営指標と従業員のメンタルヘルスとの間に相関関係があるかどうかを調べました。従業員千人以上の企業のうち、経営指標の得られた二十三社を対象にしました。
もっとも多くのメンタルヘルス指標と相関関係が見られたのが従業員の増加率による影響です。従業員が減少すると、不安がつのると同時に上司や同僚との関係が悪くなり、仕事の負担感が増え、仕事の正確度が低くなり、さらに将来への希望がなくなることに相関があるとの結果を得ました。
ことし八月にまとめられた同研究所の「産業人のメンタルヘルスと企業」では、「従業員の減少が従業員のメンタルヘルスに大きな影響をもたらすことがわかった。人的資源がこのような状態に陥っては、今後の日本企業の再生はあり得ないだろう。近年の自殺や犯罪の増加を考え合わせるとき、安易な雇用調整を避けるべきだ」と結論づけています。
JMI健康調査は、従業員に職場環境や質問や身体、精神などメンタルヘルスにかんする多様な質問項目に記入していもらい、それをコンピューターで処理し健康診断をおこなっています。一九八〇年から実施し、今までに約百七十万人の調査実績をもっています。
メンタルヘルス
精神や神経の異常の発見、治療と体、心身の健康をはかること。
精神的資質の低下を危惧
調査にかかわった筑波大学名誉教授(社会精神病理学)の小田晋さんの話
企業にとって生き残りのためのリストラはやむを得ない面もあるだろうが、安易におこなわれるならば従業員の心を不安定にし、モラルと精神健康の低下に直結することがはっきりした。
中高年を解雇することが若年層の活性化につながっていない。リストラという名の人減らしが従業員の精神的資質の低下を招かないか危惧(きぐ)している。人事政策からも産業精神衛生保健上の視点からも、新たなとりくみが求められている。
<小田さんのインタビュー・・同紙3面>
労働者を物と同じように扱われては困るのです
リストラは若年層の「やる気」をなくす
筑波大学名誉教授の小田晋さんに企業のリストラが従業員(労働者)にどのような影響をあたえているのかを聞きました。
筑波大学名誉教授 小田晋さん語る
私は茨城県の診療所で診察のお手伝いをしています。東京のようにそう多くはありませんが、リストラが原因と思われるうつ病患者が外来にくるようになっています。
そこは三つのタイプが見られます。一つは、自分もリストの対象になるのではないか、という不安をかかえる在職中の人です。二つは、解雇の対象になり、実際に職場を追い出されて精神的に追いつめられた人です。そして、三つは、「燃え尽き症候群型リストラうつ病」とでもいいましょうか、こういうタイプがもっとも多いのです。
自分で自分を責め落ち込む
たとえば五人で仕事をやっていたのが、リストで三人に減らされる。しかし、実際には仕事量は減っているわけではから、仕事はどんどんたまってくる。そこで、上司に「パートでも増やしてくれないか」と申し出ると、「君はそのくらいの仕事量がこなせないのか」などといわれてしまう。すると、「ああ、自分は能力がないのか」と思うようになり、「こんどは自分がリストラの対象になるのではないか」と不安が頭をもたげてきます。
日本の労働者の場合、企業に対する忠誠心が強いので、自分に能力がないとか、自分が悪いんだとか、自分を責めて落ち込んでいくケースが非常に多い。こういう形で落ち込んでいくのを、燃え尽き症候群といます。
現在、リストラをすると株価が上がるというように、「リストラ礼賛論」さえあります。しかし、ダウンサイジング(人員削減)をイデオロギー化するのは疑問です。「雇用確保を無用視する経営者は失格である」と、日経連の奥田会長も異を唱えているように、経営者の能力が問われているように思います。
実際に痛みを感じているか
経営者はダウンサイジングによる痛みを口先ではいうこともあるが、実際には痛みを感じていないんじゃないかと思われる場合もあります。
企業一家といわれたように、のぼり坂のときは将来のためにといって賃金を抑えてきた。ところが、こんどはダウンサイジングするにあたって。企業は従業員にたいして、「いつでも企業に依存されては困る」という。こんなことをしていると、企業はいつか従業員に復讐(ふくしゅう)されるのではないかと思われてきます。
社会経済生産性本部のメンタルヘルス研究所が実施しているJMI健康調査(メンタルヘルス診断)で、リストラが安易におこなわれれば、従業員の士気と精神健康度が低下することに直結することがわかりました。従業員が減少すれば、若年層の「やる気」がなくなり、健康度も低くなるという憂慮すべき結果がでています。
従業員というのは、やはり働いている場所に愛着がある。物と同じように扱われては困る。企業への忠誠心を失えば、モラルも失う。職場の活性化につながらない。
企業も背に腹をかえられないこともあるのでしょうが、それを認めたとしても、従業員を一人でも減らすことが経営者の能力だというのはどうだろうか。従業員に不必要なプレシャーをかけ、自己都合退職に追い込んだりするやり方はぜひやめてもらいたいと思います。
おだすすむ
一九三三年大阪府に生まれ。東京医科歯科大学大学院卒。筑波大学教授をへて現在、国際医療福祉大学教授。専攻は社会精神病理学および犯罪学。医学博士。著書は「新版・人はなぜ、気が狂うのか?」「人はなぜ、犯罪をおかすのか?」まど多数。