独行法反対首都圏ネットワーク |
「大学の自律確保」大勢
国立大学長アンケート 財源安定求める声も
『東京新聞』1999年12月23日付朝刊
(1999.12.23 [he-forum507]Tokyo Shinbun 12/23)
「大学の自律確保」大勢
国立大学長アンケート 財源安定求める声も
独立行政法人化をめぐり国立大学協会(会長・蓮實重彦東京大学長)が全国立大学の学長らを対象に行ったアンケート結果の全容が二十二日、明らかになった。高等教育や学術研究の未来のために最低限必要な要素について、各校二つに絞って意見を聞いたところ、大学の自主・自律性を確保し、教育研究や組織運営に政府が干渉しないことなどを求める意見が大勢を占めた。国大協はアンケートをもとに、二十七日に開く第一常置委員会で国立大学の望ましいあり方について検討を進め、来年早々にも報告をまとめる方針だ。
アンケートは九十九の国立大と大学共同利用機関所長懇談会が対象で、回収率は一〇〇%だった。
それによると、独立行政法人通則法で、三―五年の中期目標を主務大臣(大学の場合は文部科学相)が指示し、主務省(同じく文部科学省)の評価委員会や総務省の審議会が評価すると定めている点について、ほとんどの大学が問題にしており、大学の自主・自律性の確保が必要だとした。
学長の選出方法など組織のあり方についても大学の自治を重んじるべきだとする意見が多数に上った。高等教育の財政支出割合が欧米先進国よりも少ないことに言及する回答も多く、独法化のいかんにかかわらず、安定した財源の確保を求める声が目立った。
このほか教職員が国家公務員であり続けることを求める意見や地方大学への配慮を求める意見も少なくなかった。授業料の値上げに反対したり、効率化優先を危ぐする意見もあった。
99大学長と大学共同利用機関所長懇談会から寄せられた主な意見
【教育研究の自主・自律性】(72大学・大学共同利用機関)
・通則法では主務省の権限が強すぎ、国家統制の危険性がある
・国家的見地からの政策や戦略に配慮すべきことは当然だが、基本的には大学の主体性にゆだねられなくてはならない
・大学における研究の特殊性にかんがみ、中期目標及び中期計画の期間は10年以上とすべきである。
【組織の自主・自律性】(63大学・大学共同利用期間)
・大学は学長以下すべての人事権を持つべきだ。業務監査するだけの閑職、常勤監事は不要で無駄だ
・学長の任命・解任を含め、研究教育にかかる大学自身の自由な自己決定権限を保障すべきだ
・学長選挙、身分、定員などに関する自己決定権は、大学自治の根幹をなす部分だ
【公正な評価】(33大学)
・評価に基づく資金の配分を行う時は配分方針・基準等を公開し、各大学に対しては具体的な運用方法を明示する
・全大学における位置を示す相対評価とし、公表する
・評価と人事は純粋に学問的見地からなされるべきで、政治的・思想的理由によって左右されることがあってはならない。大学は国家の良心であり、羅針盤である
【財政基盤の確立】(56大学)
・経済的自律(金は出すが口は出さない)の保障が最大の要件だ
・教育研究の推進は未来への先行投資で、高等教育に対する国費を先進国並みにすることが重要だ
・公的資金の拡充を確保する具体的方策を示す。教官あたり積算校費にあたる基盤的経費を確保する
【教職員の身分保障】(12大学)
・教育研究の持続性から教職員の国家公務員としての身分が保障されなければならない
・どうしても譲れない条件は教職員に国家公務員の身分を与えることだ
【地方大学への配慮】(4大学)
・大学間に格差なく、人事、組織運営体制、財政面について保障し、徹底した支援を行う
・一定レベル以上の教育・研究者を一県一国立大学として全国的に配慮することが絶対条件だ
【その他】
・授業料を値上げせざるを得ないような状況は絶対に避けるべきだ。特に医学部では国民医療の崩壊につながる
・大学は独善を排し、不断の改革を行い、説明責任を果たす必要がある
・研究開発、教育において国と国立大学が主体となり関与しなければならない分野を明確にすべきだ