独行法反対首都圏ネットワーク

国立大学の法人化は疑問
知の普遍の意味を問う(岩崎稔さん紹介記事)
(1999.12.22[he-forum 504] 朝日新聞 岩崎 稔さん)

佐々木(東職)です。
電子化しましたので、ご紹介します。

朝日新聞 12月12日夕刊

国立大学の法人化は疑問
知の普遍の意味を問う

岩崎 稔さん(43) 東京外語大助教授

 急浮上した国立大学の独立行政法人について、問題点を指摘する大学人の論文を集めた「激震!国立大学」(未来社)の共同編者を務めた。十一月の出版から一ヵ月で、既に三刷りと好評だ。
 「今こそ原点に立ち戻るべきだ。学問をマーケットメカニズムにゆだねれば、実利志向が強まる。社会のなかの、「知の集積体」としての大学が、本当にそれでいいのでしょうか」
 自らも独立行政法人化を「自殺行為」と断じる論文を寄せ、法人化は、「国家による規制か、それともマーケットメカニズムによる効率性かという誤った二分法」によって生み出された、と指摘。大学は自治を拡大するどころか「中央省庁の支配する企業的な経営管理の組織となる」と憂慮する。
 専門は哲学と政治思想。独立行政法人化に異議を唱える背景には、年々悪化する国立大学の研究環境への危機感がある。「授業負担が重くなり、研究と教育の両立に悩んでいる同僚は多い。本来は立ち止まって考えなけれはならない職業なのに、マーケットメカニズムではその行為を算定することはできない」と話す、「世間には、国立大学の先生は暇そうだ、といった見方もあるのではないですか」と水を向けると、岩崎氏は、「トラキアの女」のたとえを持ち出した。古代ギリシャの哲学者タレスが天空の星を見ながら歩いていたら、ため池に落ち、トラキアの女に笑われたという逸話だ。「知」というのは確かに実生活では無力な面もある。今の時代、学者は常にトラの女の笑いにさらされながら、学問なんたるかを考えなければならないでしょうね」
 ユニバーシティー(大学)の語源をたどれば「普通」という意味にたどり着く。「もちろん大学にも問題はある。だが、お金になるかどうかという問い詰め方では問題は解決するどころか悪化する。今こそ知の普遍の意味を問いな直さなければなりません」 (作)



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