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ピンチか好機か 独立行政法人化 新潟大
新潟日報(12/18)
(1999.12.18 [he-forum 492] 新潟日報朝刊12月18日記事)
新潟大職組の立石です。
12月18日新潟日報朝刊 「’99を探る」を送ります。
ピンチか好機か 独立行政法人化 新潟大
5年後実施の可能性
予算の削減が心配 魅力作りが必要
「独立行政法人化」という聞き慣れない言葉が今、全国の国立大学を揺さぶっている。財政的に国が保障していた大学の運営に、独立採算制など民間企業のような手法が導入される構想が現実味を帯び、国立大学が大きく変わろうとしているためだ。背景には国が進める行政改革があり、「国立大学だけを聖域視するわけにはいかない」とする政府、与党の強い圧力がある。「大学は市場原理に基づく効率化にはなじまない」「いや、国民にもわかりやすい運営方法を取り入れないと国立大学は見放される」。構想発表以来、各大学では賛否両方の意見が教員間で交錯している。新潟大学のキャンパスに独立行政法人化問題を探った。(編集委員 小町孝夫)
本年度、日本の国債、地方債(借金)残高は600兆円に達し、国内総生産額を超えた。危機的に間で積み上がった借金のつけを次世代に回さないためには、消費税などの大幅増税で国民に負担を強いるか、政府、自治体をスリム化する行政改革しか方法はない。政府は、行革の大目標として2010年までに国家公務員の25%削減を公約している。国立大学は教職員12万5千人と国家公務員の15%弱を占め、郵政事業に次いで人員が多い。人員絞込みはテーマとなった。
しかし、文部省は「大学は効率化にはなじまない」と、国立大学にメスを入れることには反対してきた。ところが今年8月、方針は一転、有馬文相(当時)が私的懇談会を設置し、独立行政法人化の検討作業が進められている。
<基礎研究>
「私のように基礎研究に携わる者は独立行政法人化によって新大に予算が十分回ってくるか非常に心配している」動物解剖学を専攻する理学部の渡辺勇一教授は憤りを隠さない。
構想によると、法人化後の大学は国直轄が外れ、学長の任免などの人事や国からの交付金を大学側が自由にでき、学部、学科の設置・廃止も自由化される。一方で大学運営については中期目標を定め、国の評価機関が目標の達成度を評価し、評価の高低によって国から各大学への交付金に格差がつく。
渡辺教授の懸念は、仮に新大の評価が低いと交付金が削られる。更に限られた財源の中で行われる学内配分で地味な基礎研究分野には十分な研究費が回らない可能性があるというものだ。
「学部廃止もありうる」教育人間科学部の森田竜義教授の憂いは深い。教員養成が主目標の同学部は、これからの少子化で教員需要が減り、ただでさえ学部定員削減に拍車がかかるのではないかと危機感を募らせる。加えて、「大学が独立採算になると、学生数の少ない、あるいは教員採用率が低い教育人間科学部は公立運営の観点から真っ先にリストラ対象になるのではないか」。
<生き残り>
「誰も改革などやりたくはない。しかし、現在の国立大学は国際的な評価を受ける多くの研究業績があるか、大学の重要な機能である日本の独自文化を世界に発信しているか、地域密着型の大学として地元の要望にこたえているだろうか」鯰越溢弘法学部長は自問しながら、独立行政法人化を通じた改革をやらないと国立大学は国民から孤立すると強調する。
「これまでは大学が学生を選んできた。これからの少子化社会では学生が大学を選ぶ。私立大学は学生を呼び込むために個性的で魅力的な大学づくりに血眼になっている。一人、国立大学だけが超然としていられる時代ではない。まして新潟は東京に近く、新大に魅力がなければ学生は首都圏に吸い込まれ、先細りになる。独立法人化の動きを生き残るためのチャンスにしなくてはならないのではないか」
新大での賛否両論を聞くと、法人化に反対の教員も教育内容の改革などは大いに進めるべきだと言う。問題は、国が大学側に一見自由裁量権を大幅に譲渡したように見せながら、一方で評価により管理を強めるという手法にあるという。
<役割>
文部省の掲げた独立行政法人化構想は論議途中で、2003年方針決定、2004年実施の線が強いとされる。
東大など有名大学は、現行のままでも法人化されても生き残るが、法人化は地方大学に大きな影響を与えると予想されている。新大での反対、推進の動きはこれから熱を帯びる。
しかし、法人化の動きは「大学の中のあらし」ではすますことのできない問題をはらんでいる。
新大は企業、学校など県内のあらゆる分野への人材供給源となってきたことは紛れもない事実だ。供給源の揺らぎは県内に陰に陽に影響を与える。独立行政法人化の動きは地域にとっても見過ごすことのできない動きである。