独行法反対首都圏ネットワーク

独立行政法人=これでスリムになるのか
(1999.12.15 [he-forum 483] 毎日新聞社説12月14日付)

社説・バックナンバー毎日の視点
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1999年12月14日
独立行政法人=これでスリムになるのか
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 参院で審議中の中央省庁改革関連法案が、成立に向け大詰めの段階を迎えている。
 関連法案の中には、中央省庁の再編に伴い2001年4月から独立行政法人に移行する59法人の目的や業務内容などを定めた個別法案が含まれている。
 独立行政法人は、中央省庁をスリム化するための「切り札」として採用された。国がじかに運営する必要のない事務・事業を、国から分離して法人化するものだ。
 各法人は、民間企業並みの経営手法や競争原理を取り入れなければならない。それによって質の高いサービスの提供、効率的な運営を図るというわけだ。
 英国の「エージェンシー(外庁)」をモデルにしたもので、英国では現在、刑務所庁、旅券庁など132の機関がエージェンシー化され、一定の効果を上げている。
 英国のエージェンシーを貫く考え方は、明確な中期目標に基づく自律的な組織運営、透明な業績評価システムと情報公開、組織と業務の定期的な見直しの3点だ。
 独立行政法人も、基本的にこうした考え方を取り入れているが、スリム化の観点から見た場合、首をかしげざるを得ない部分もある。
 それは、役員の数が多いということだ。59法人の役員合計数は288人にも達する。
 役員は、理事長、監事、副理事長、理事で構成されている。
 理事長は、法人のトップであり、民間企業で言えば社長である。監事は、民間企業の監査役に相当し、独立行政法人の財務状況などをチエックするのが主な役割だ。監査を厳しくするため、監事の人数は一律2人にした。理事長と監事は、確実な経営をしてもらう上で必要不可欠な役員と言っていいだろう。
 問題は、残る副理事長と理事である。大半の法人が副理事長1人や理事1〜4人を置くとし、中には理事数が飛び抜けて多い法人もある。
 例えば「産業技術総合研究所」(通産省所管)は、理事長、監事のほかに、副理事長1人、理事10人以内を置くことが可能とされている。また「農業技術研究機構」(農水省所管)も副理事長1人、理事7人以内を置くことができる、と規定されている。
 なぜこんなに多くなったのか。
 中央省庁等改革推進本部は「産業技術総合研究所は16研究所を、農業技術研究機構は7試験場を統合して作った。経営上の意思決定をスムーズに行うために理事数を多くする必要があった」と説明している。
 また全体の役員数について同本部は、既存の特殊法人の一法人当たりの役員数は7・9人だが、独立行政法人の場合は2・9人でしかない。かなり絞り込んだ結果であり批判は当たらないと反論している。

 とはいえ、独立行政法人に対しては、税金の無駄遣いを指摘されている特殊法人の二の舞を演ずることにならないかとの懸念が消えていない。国会審議の中で「役員が多すぎる」「官僚の天下り先になりかねない」といった指摘が出されたのも、そうした経緯があってのことだ。
 各主管官庁や法人は、こうした懸念や批判を忘れずに、業務の見直し、理事数の将来的な削減、監事の非常勤化などスリム化のための自己努力を怠ってはならない。
(毎日新聞 1999/12/13 23:17:00)



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