独行法反対首都圏ネットワーク

日本科学者会議琉球大学分会・沖縄支部、琉球大学長へ申し入れ
(1999.12.2[he-forum 427] JSA琉球大学分会・沖縄支部の申し入れ)

JSA沖縄支部の亀山 統一です。
 日本科学者会議琉球大学分会・沖縄支部は、学長宛に1日午後下記の申入書を提出しました。

1999年12月1日  

琉球大学 学長
森田 孟進 先生

日本科学者会議琉球大学分会
 代表 堺 英二郎(理学部)
 総務 亀山 統一(農学部)

日本科学者会議沖縄支部
 代表幹事 武居 洋・新垣 進


国大協第一常置委員会からの「依頼文書」に対する対応について(申し入れ)


 初冬の候、貴職には益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。
 さて、標記の件につきまして、下記のような情報が寄せられております。

1. 国大協総会(11月17日〜18日)をふまえ、国大協第一常置委員会として11月26日頃に各国立大学長あてに「依頼文書」が発せられ12月2日頃集約とされていること。

2. その主旨は、国立大学の独立行政法人化が行われる事態となった場合、大学の特性からどうしても譲歩できない点を2点程に絞り提出願いたい旨とされていること。

3. その意見集約をふまえ、第一常置委員会としての整理を行なうとされていること。

4. そのことを受け、12月17日頃、国大協執行部として文部省と独立行政法人化問題に関する特例上の扱いについて協議を行うとされていること。

 上記のことが事実であれば、当該依頼文書への本学の対応は極めて慎重になされるべきものです。
 そもそも、独立行政法人通則法に定める独立行政法人のあり方は、教育研究機関である国立大学には根本的になじまないものであり、いくつかの例外措置によって解決できるものではありません。本学は2年前に独立行政法人化に反対の意思を評議会で決議しておりますし、現在、ほとんどの学部教授会では独立行政法人化に反対の意思が支配的です。
 また、仮に抜本的な特例措置が講ぜられたとしても、独立行政法人化を容認するか否かについては、いまだ、学内で全く議論されておらず、琉球大学において独立行政法人化を前提としての対応の検討を行うことについて、コンセンサスは形成されておりません。
 このような状況下で、「独立行政法人化される場合に譲歩できない点を数点挙げる」ということを敢えて行うならば、学内外からは、本学を含めた国立大学が独立行政法人化反対の立場を変更して、いわゆる条件闘争に切り替えたものと受け取られざるを得ないことでしょう。
 以上のことから、日本科学者会議琉球大学分会・日本科学者会議沖縄支部は、貴職に対して、緊急に下記のことを申し入れます。
 なお、独立行政法人化問題に関する本会の声明を添付いたしますので、ご高覧下さい。


一、 教育研究機関たる国立大学の擁護・発展の立場から、国立大学の独立行政法人化に反対の姿勢を明確にしていただきたいこと

一、 上記の国大協第一常置委員会からの「依頼文書」については、拙速に回答を行わず、十分な学内での議論を保障していただきたいこと

一、 文部省、国大協などの動向や関連資料については、全教官への迅速な情報提供にいっそう努めていただきたいこと

以上


(参考資料)
国立大学の独立行政法人化に反対する決議
1999年11月25日
日本科学者会議沖縄支部

 政府文部省は、行政改革の一環として、国立大学の独立行政法人化への動きを急速に強めている.
 独立行政法人制度は、行政改革の切り札として提起された制度で、行政を企画・立案機能と実施機能に分離し、実施機能を独立行政法人として分離させるというものである。したがって、教育機関である大学にはふさわしくない制度として、当初は大学に適用することを想定していなかったものである。ところが、公務員定員の25%削減計画を実現するために急に提起されてきた。
 国立大学の独立行政法人化は、大学に法人格を与えて、一見、大学の自主性・自律性を拡大させるかのようにみえる。しかし、独立行政法人通則法から明らかなように、経済的効率性の観点に立って,主務大臣が独立行政法人の統廃合を含めた措置を講ずることができるなど、学問の自由、大学の自治を踏みにじる内容になっている。このような内容をもつ法律が、かりに、一部、修正が行われたとしても、国立大学に適用されることは、多くの点で問題がある。

 第一に、国は教育諸条件を整備し充実する義務があり、かつ教育内容に関与してはならないという、憲法23条及び26条、さらには教育基本法10条の定めやその精神に反している。なぜなら、いま進められようとしている国立大学の独立行政法人化は、研究や教育施設などの教育条件を現状以下のものとすることを前提にしつつ、間接的ではあれ、国による教育内容への関与を大幅に強めることになるからである。

 第二に、国民の教育権という点からも問題がある.現状においても、度重なる学費の値上げで、日本の高等教育費は諸外国に比較して極めて高い水準にあり、すでに経済面で高等教育を受ける権利を侵害しつつある。国立大学の独立行政法人化は、民営化も視野に入れつつ、市場原理や受益者負担論を高等教育の現場に導入するものであることを考えれば、それはさらなる学費の値上げなどにつながり、教育の機会均等を掘り崩し、国民の教育権を脅かすことになる。

 第三に、短期的な視野で、かつ効率性に偏重して行われる大学の評価や改革は、目先の利害から成果の上がりやすい、あるいは社会(経済界)の評価の得られやすい研究に走る傾向を助長することになる。その結果、研究・教育の総合性が損なわれ、経済界に期待され、採算のとれる研究分野だけが残ることになりかねない。このようなことは、同様の制度を導入したイギリスやニュージーランドなどでは現実に起きている。
 基礎的科学研究は、実用に直結しないし、経済的効率も悪いものであるが、これらの学問が人類の豊かな文化を支えてきたのであり、また、現代社会を支えているエレクトロニクスなどの先端技術も地味な基礎的研究が花開いたものである。学問のいびつな発達は、人類の文化をゆがめるだけでなく、将来の大きな発展の芽をも摘むことになるのである。

 第四に、特に琉球大学などの地方大学は、独立行政法人化されれば財政基盤が不安定になり、存立の危機に瀕することになりかねない。我が国では、地方国立大学は各地域に密着した研究・教育活動を行い、地方文化の発展や人材育成に少なからず貢献してきている。これらの地方大学が独立行政法人化され、十分な交付金を得られないと、地方にはこれを支えるだけの十分な経済基盤がないため、大学そのものの存立が危うくなるおそれが大きい。

 もっとも重大な問題は、今回の国立大学の独立行政法人化が、政府の唱える「行政改革」の観点からのみ提起され、十分な合意形成もなく、拙速に導入されようとしていることである。
 そもそも、わが国の高等教育・研究への財政投入は、先進諸国と比較して著しい低水準にある。戦後、日本国憲法と教育基本法の理念の下に新たな出発をはじめた大学は、半世紀を経て、極めて貧困な研究教育環境下におかれながらも、大学人の努力によって、わが国の研究・教育水準を高めてきた。独立行政法人化によって、日本の高等教育や学術研究がどうあるべきかの検討を抜きにして、その中核となる大学制度を一挙に覆えそうとしているのである。
 国立大学の独立行政法人化は、経済界の要求に基づいている。しかし、独立行政法人化によって誘導される、ゆがんだ研究教育体制は、政府の意図に反して、経済界にとっても国際競争力の基盤を掘り崩す原因となるであろう。

 いま、私たちは、地球規模の環境汚染や生物多様性の危機、廃棄物や資源・エネルギー問題、複雑な国際情勢、飢餓や難病、子どもの「荒れ」やカルト的集団の横行などの社会病理など、多くの深刻な問題に直面している。これらの課題に取り組むためには、自然・社会・人文の諸科学の共同による総合的な探求が必要とされている。21世紀に私たちが生存し、人間らしい生活を送るためには、科学の総合的な発展と、科学的精神をもった若者の育成が、不可欠の要件であるといえよう。その意味で、教育は文字どおり死活的な重要性を持っているのである。私たちの未来に関わる大学制度については、国民的な議論を十分に尽くした上で、長期的な視野と明確な展望のもとに充実していくべきである。

 以上の点から、我々は、現在進められようとしている国立大学の独立行政法人化に強く反対することを決議する。



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