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日本経済新聞(11月5日)
春秋
(1999.11.6)
日経 11/5 春秋
相次ぐ金融機関の合併、統合に重ねてニュースを読む人もいるだろう。一橋、東工大など東京地区の国立5大学が教養教育の共通化や相互の編入学などで連合組織を作るという。少子化のもとで学生のシェア争いが広がり、一部では学費を値下げする私大もある。国立大から広がる大学再編の波である。
▼大教室の人気講義を他大学から受けに来る「もぐり学生」はいまもいるに違いないが、この連合が実現すれば自分の目標や関心に合わせて学生が他の大学の授業を選んで履修し、単位を得ることができる。大学のブランドに安んじて、入学後を遊び暮らしても卒業できる現状から、学んだものが問われるしくみに一歩近づくことは確かだろう。
▼もっとも「全入時代」が近いといわれる日本の大学は、それ以前に大きな問題を抱えている。高校以下で「ゆとり教育」を目指して進んだ教科内容の削減や、受験の負担を軽くして大学が学生集めに腐心した結果進んだ基礎学力の低下である。ここ10年来「ゆとり」と「個性」をキーワードにした教育改革の功罪を率直に問う必要がある。
▼さきに中央教育審議会が高校教育と大学の連携でまとめた中間報告では、受験生の資質や進路と大学の方針などを相互に選択し合って入学者を決める方向を打ち出したが、学力低下対策へ向けた高卒時の「到達度評価試験」は退けられている。学生の学力向上が伴わなければ、大学再編の効用はおぼつかない。