独行法反対首都圏ネットワーク

国大理学部長会議 独法化で声明文
「基礎科学の重要性は不変」(科学新聞11/19)
(1999.11.26 [he-forum 399] 科学新聞11月19日付)

『科学新聞』1999.11.19

国大理学部長会議
独法化で声明文
「基礎科学の重要性は不変」

 国立大学理学部長会議は11月10日、現在の独立行政法人化に向けた動きに対して憂慮するという声明文を発表した。同会議は、国立大学のうち理学部あるいは理工学部を持つ32大学の学部長で構成される。

 声明では、「理学部や関連大学院で教育・研究の対象となる数学、物理学、化学、生物学、地球惑星科学、天文学、情報科学等の基礎科学は、研究を行う段階では何らかの実用化を目指しているものではない。しかし、その成果が長い時間を経た後で重要な実用につながった例は数限りなくある」と基礎研究の持つ特性を説明。その上で、現在医薬品の開発に活用されている遺伝子工学は「ワトソンとクリックによるDNA分子の二重らせん構造の発見を契機として発展した分野」であり、「その論文はわずか2ページにも満たないものである
が、その意義の大きさはいくら強調してもしすぎることはない」と実例を示した。

 さらに、このような基礎研究の特性からは、独立行政法人通則法が定める3〜5年で評価しようということ自体が不可能であり、仮に通則法に従って独立行政法人化が行われれば、「明治以来築いてきた日本の基礎科学が衰退することは火を見るより明らか」と懸念を表明した。

 また声明は、定員削減計画についても言及しており、ここ十年間の大学院重点化によって院生は大幅に増加しているにもかかわらず、実質的教職員数は削減されており、これ以上の定員削減は教育の質を低下させることになるとしている。

 ただし今回の声明は制度改革そのものを完全に否定しているわけではなく「決断は議論を尽くした後になされるべき」としている。

解説
 国立大学の独法化については、これまで様々な議論が行われているが、独法化されるのは大学であるのに対して、例えば医学部や理学部のような分野の違いによる温度差が大きいため、大学全体ではなかなか意見はまとまらない。現在まとまっているのは、(1)基本的には独法化に反対であること、(2)もし独法化するならば特例法を設けることなど、ごく基本的なことだけである。いずれにしろ、現在の情勢では独法化あるいは独立化の動きは止めることはできそうにない。そのため、各大学や共同利用機関、附置研究所などでは、早い段階で独法化を前提としたどのような特例が必要かといった議論を進めるべきである。
 しかし、政府はその前提条件として高等教育や研究に関する予算・人員を大幅に拡充しなければ、声明が指摘するように日本の基礎研究が衰退し、欧米では日本の基礎研究ただ乗り論が再燃して世界の中で孤立することになるだろう。



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