独行法反対首都圏ネットワーク

東京学芸大学教官有志声明
(1999.11.20 [he-forum 382] 東京学芸大学教官有志声明)

国立大学・大学共同利用機関の独立行政法人化に対して大きな危惧を表明します。

1999年11月17日 東京学芸大学教官有志 101名

 1999年9月20日の文部省による方針転換以来、国立大学の独立行政法人化は、既定の事実であるかのごとく、加速度的に進行しようとしています。しかしこれは、「自自合意」によって一気に引き上げらた国家公務員の25%削減に対応するためだけの単なる数合わせに過ぎず、本来の大学改革とは無縁であるばかりか、求められている行財政改革の趣旨からもはずれたものです。
そもそもの問題のはき違いは、国立大学を行政組織としてしか捉えることのできない発想の貧困さにあります。独立行政法人は、行政の「企画立案機能」と「実施機能」を切り離し、後者のうち民間に委ねられないものの「独立化」を通して、その「効率化」を図ることを目的としています。もし独立法人化されれば、大学は、主務大臣が定めた3年以上5年以下の中期目標に従って中期計画を実践し、その達成を総務省の審議会を含めた二重三重の評価システムによって評価され、その結果によっては、主務大臣に事業の改廃についての勧告がされることもありうるという立場に置かれることになります。しかし、研究活動と教育活動を担う大学は、このような一律の評価と「効率化」という物差しだけで計ることのできない文化の創造の場です。
一部に、国立大学の独立行政法人化は、「独立化」によって、各大学の自由裁量の余地が拡大するという考え方があります。しかし、問題の出発点に「財政的減量」がある以上、「効率性」と絡めた財政的締め付けは、これまで以上に厳しくなりかねません。たとえば自然科学系では、研究費を一律「非実験化」したのち、応用科学へ「効率的」に重点配分することがめざされていますが、これにより産業界にとって即効性のない基礎科学は、壊滅的な打撃を受けてしまいます。
確かに、独立行政法人通則法が大学の実状に相応しくない場合、個別法が適用できるといわれますが、両者の関係は不明なままで、何の保障もありません。少なくとも9月20日に文部省が示した、「特例措置」による対応という「バラ色の」方針が通用するような状況でないことは確かです。
この10年、日本の大学は、文部省の行政指導という制約の中で、様々な改革に取り組んできました。東京学芸大学でも膨大なエネルギーと時間をかけて、新しい教育問題に対応できる自己改革を進めてきました。その行方をまだ何もみないうちに、本来の大学改革とは全く関係のない場から、理念を欠如した組織改革が新たに押しつけられることには、大きな憤りを抱かざるをえません。また、今回の独立行政法人化によって、教員養成大学が、市場原理による教育のみを考えざるをえなくなるとしたら、教育の安定性、系統性、公共性は根底から破壊される恐れがあります。
独立行政法人化が実行されれば、この国の将来の教育と研究に取り返しのつかない禍根を残すこととなります。改革には、そのための十分な時間と議論の積み重ねが必要です。拙速ともいうべき現在の事態の進展に対して、私たちは、強く不信と危惧の念を表明し、関係当局に慎重な態度を求めるものです。



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