独行法反対首都圏ネットワーク

五大学連合*新しい姿に夢はある(11/12 北海道新聞社説)
(1999.11.13 [he-forum 353] 北海道新聞社説)

『北海道新聞』社説

五大学連合*新しい姿に夢はある(11月12日)

 東京に本拠を置く国立五大学が連合し、教養教育の共通化や編入学の特別枠などを設ける構想が進んでいる。

 国立大学は入試のセンター試験などで、東大・京大を頂点に序列化が明確になっている。それぞれの閉鎖性も強い。高校生は進学先を選ぶ際、「学びたい学問」より「入れる大学」を選ぶ傾向が強く、入学後に選択の誤りに悩むことも少なくない。

 連合構想は学生の多様なニーズに共同でこたえるのが狙い。同時に、国立大学の序列主義に風穴を開ける可能性や、学生が本当に自分にあった進路に選び直せる機会を与える要素もある。

 改革の必要性が強く指摘される中で、新しい大学像の一つとして評価したい。

 構想に参加しているのは一橋、東京工業、東京医科歯科、東京外語、東京芸術の五大学だ。それぞれに異なる分野で独特の教育を続ける伝統校である。

 実現すると、芸大でオペラを志した学生が外大でイタリア語を本格的に学んだり、医師となった卒業生が、医療福祉経済や医療機器についてあらためて学び直すことも可能になる。

 大学間の共同研究の枠組みもできやすくなろう。わが国が欧米に比べて遅れているとされる学際的な分野で効果を発揮しそうだ。

 国立大学はいま、独立行政法人化問題などに見られるように、生き残りをかけた改革を迫られている。

 五大学連合には、この生き残り手段という側面もある。しかも、有力大学の連合だけに、他に与える影響は大きい。

 注意しなければならないのは、この連合が実現するにしても、東大、京大と並ぶ新たな頂点を目指すようでは別の権威をつくるだけで、構想に掲げる「学生のための改革」という理想をゆがめる。

 また、それぞれが培ってきた教育理念を不透明にさせることにつながる。
 構想実現には、カリキュラムや学生の移動などさまざまな問題を調整する事務局体制の確立など課題が山積する。これをいかに解決するか、今後各地で進むと思われる大学間連携の先行例となろう。

 五大学間だけの情報にとどめず、わが国の大学改革に役立つよう、問題点や解決方法を全面的に明らかにすることを求めたい。

 道内では、大学院レベルでの北大と北海学園大の単位互換や、小樽商大と室蘭工大との共同研究などがあるが、大学間の本格的な連携の試みは、総じて緒に就いたばかりだ。

 連合を構想する五大学は、首都圏に立地する環境にあることが無視できず、広い地域に大学が点在する道内で、同様に取り組むには難しい面が確かにある。

 しかし、一部ですでに始まった衛星放送やインターネットを使った共同授業といった新しい方法がある。集中講義を交換することもできよう。

 道内でも、大学それぞれの理念や特色を堅持しながら、連携の道を探らなくては、学生の要望に沿った大学改革の流れから取り残されてしまう。



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