独行法反対首都圏ネットワーク

歴史学研究会 国立大学・大学共同利用機関の独立行政法人化に反対する声明
(1999.11.9 [he-forum 328] 歴史学研究会の反対声明)

歴史学研究会(雑誌『歴史学研究』、会員2500名)の声明を送ります。
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国立大学・大学共同利用機関の独立行政法人化に反対する声明

 九月二○日、文部省は国立大学長会議で「独立行政法人化」案を示し、事実上、国立大学制度の廃止の方向を打ち出した。
 そもそも独立行政法人化とは、「行財政改革」の一環として、政府諸機関のうち「定型的業務」を担う「実施機関」の効率化・スリム化という、国家財政上の課題を最優先とした考え方に基づいている。また、この制度は、独立行政法人の自主性・自律性を謳ってはいるが、実際には主務大臣や主務省の評価委員会、総務省の審議会などの権限が強く、極めて行政従属的な性格を有する制度である。
 このような制度が、大学人自身の学問的良心と創造性に基づいて研究・教育が行われるべき大学・大学共同利用機関になじまないことは明白である。「通則法」によれば、独立行政法人においては「中期的」な目標・計画を策定し、企業会計原則を導入するとされているが、ここから必然的に導き出される業務運営の効率化と減量化は、短期間で成果をはかれない基礎研究や基礎教育を著しく阻害するおそれがある。とりわけ、研究成果に一面的な評価を下しにくい人文系・社会系諸科学にとって、こうした運営方法が大学・大学共同機関に導入されることは、ひとり国立大学・大学共同機関だけの問題だけではなく、学問自体の存立基盤を破壊し、ひいては文化の死滅をも導くことになる。さらに予想される学費等の値上げにより、教育の機会均等をも保証できなくなるであろう。
 国立大学・大学共同利用機関の改革は、日本における学問研究および高等教育改革の文脈において、広く国民の議論の下で行われるべきである。現在のように、国民不在のまま、行財政改革の一環として国家公務員減らしの数合わせために行われようとしている「独立行政法人化」は、国立大学・大学共同利用機関の研究・教育機能を低下させるだけでなく、内発的な改革をも阻害することとなる。
 わたしたち歴史学研究会は、将来の高等教育および学術研究の発展のために、「独立行政法人化」案を速やかに撤回し、広く公共の議論に付すことを要求する。

一九九九年一一月一日 
歴史学研究会



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