独行法反対首都圏ネットワーク

東京外国語大学 地域・国際講座の決議と討議内容
(1999.11.9 [he-forum 321] 東京外国語大学の状況(3))

 東京外国語大学の三大講座のうち、地域・国際講座の決議をお送りします。後半の討議内容にもご注目下さい。
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「独立行政法人化」問題に関する地域・国際講座会議の記録
1999年10月20日 12:15-13:45 於 4号館6階中会議室 

 本日の討議の結果、地域・国際講座は、国立大学の独立行政法人化に反対を表明することになった。

 その理由は、さしあたり次の2点に集約することができる。

 ・大学改革は、本来、大学の社会的使命である研究・教育面のよりいっそうの改善・充実をはかるためになされるべきものである。しかるに、今回、政府が進めようとしている国立大学の独立行政法人化は、もっぱら行財政改革の問題として検討されているにすぎない。また、この政策は、直接の当事者である国立大学において、まともに議論されないまま、検討され、決定されようとしている。国立大学で教育・研究に携わる者として、この施策が、将来の国立大学における研究・教育面にどのような悪影響を及ぼすのかを懸念せざるをえない。

 ・東京外国語大学の将来との関連でみれば、独立行政法人化は、国立大学の自律性を著しく損なうおそれがある等、これまで積み重ねられてきた自主的な改革の流れを断ち切り、今後、本学の教育・研究活動にふさわしい改革をさらに推進するにあたって、重大な障害となることが懸念される。

 また、地域・国際講座は、中嶋嶺雄学長に対し、10月27日(水曜日)までに、この本講座の独立行政法人化反対表明について御見解を明らかにするとともに、10月29日に予定されている関東・甲信越ブロック学長会議において、いかなる発言をされるのかを予め全学教授会で表明されることを要望します。また、あわせて、本学において、国立大学の独立行政法人化問題をめぐる情報開示を徹底し、早急に特別委員会等この問題を検討する専門の組織を設置し、教授会においてこの問題を議論するできるかぎり多くの機会を提供されるよう要望します。

1999年10月20日
外国語学部 地域・国際講座

備考:
10月20日午後5時、学長室にて、講座長ほか一名が、この会議記録を添えて、講座会議での討議内容と要望を中嶋学長に伝えました。



 本日の講座会議における発言要旨を発言順に列挙します。(発言者の重複あり)

・現在の問題は、国立大学の独立行政法人化の内容それ自体とともに、独立行政法人化をめぐる議論が社会的に盛り上がらないことにある。国立大学の独立行政法人化は行財政改革の問題から出発し、その視点から討議されてきたが、高等教育の側からの声を出して行く必要がある。9月末の文部省案は確定したわけではないことを強調することが重要である。これまで大学からの声が少ない。「教育と研究の原点に立ち戻れ」という視点から、改革への取り組みを強めてゆかなければならない。本学の種々の改革に関連する委員会は、ここしばらく実質的な活動を停止しているが、大いに問題である。

・反対したり、反対決議をしたりすることは可能である。しかし、世間の目は、少子化や不況など厳しい社会情勢の中で、国立大学は何をやってきたのか、と不信のまなざしを向けている。「われわれには問題がない」という態度では、世間の目が許さないだろう。地域・国際講座は、10月29日の関東・甲信越ブロック学長会議までに、議論をどの方向にもって行こうとしているのか。

・今の動きに対して、何も懸念を表明しないまま、10月29日の学長会議で中嶋学長が個人的見解を表明してもらっては困る。

・独立行政法人化の流れが強いから、万一、独立行政法人化が実現したときに備えて、今から改革をすすめようというような発想はやめるべきである。独立行政法人化を前提とするような「改革」は、大学が本来行うべき改革とは違うはずである。独立行政法人化と大学改革は、本質的に別問題として考える必要がある。本学には大胆な改革が望まれるが、それが独立行政法人化の枠組みの中で達成されるとは思えない。

・独立行政法人化は避けられない状況にあるから、講座会議は学長に要望を出し、それらが実現されるよう努めるべきである。

・これまで本学が作り上げてきた改革像や改革の実践に照らすと、独立行政法人化は困る。本学の改革の流れの中に、独立行政法人化は当てはめることができない。

・「教育の現場」における感じ方は違うということを、はっきり言うべきである。新入生の補習授業など、現在、大学教育の現場で深刻化している諸問題を取り上げる必要がある。大綱化による改革の成果や課程の評価もまだ出ていない。

・もっと時間がほしい。対案を作ろうにも、あまりにも事態の流れが早すぎる。

・大学改革には大賛成である。しかし、独立行政法人化とは別の次元の問題である。良い教育・研究をどう作り出すかをもっと議論すべきである。また、大学改革の進め方についても、もっと議論すべきであって、独立行政法人化が本学の改革にどう影響を与えるかについても合わせて議論して行かなければならない。

・改革の効果は徐々にしか表れない。10年、20年単位に見る必要がある。改革は、独立行政法人化問題で出てきた問題ではなく、すでに本学においてもカリキュラム改革などで出てきており、少しずつ進んできてもいる。独立行政法人化に反対することは、改革に反対することだ、という考え方はおかしい。独立行政法人化と本学の改革は、どうしても合致しない。

・これまでのわれわれの改革は、本学をどうするか、という次元の話であった。独立行政法人化問題は、本学の枠を越え、日本の大学教育をどうするのかという次元の問題である。独立行政法人化が実現すれば、大学の自主権などがなくなるだろう。今、重要なことは、まずこれに「反対」を言うことである。「反対」を言って初めて、それに代わる発想が出てくる。まず、反対を言っておかなければならない、そうしないと、向こう側のペースでやられてしまう。真剣に改革を考える必要がある。本学の改革は、ことによると本学だけの改革にとどまらないかもしれない。他大学との連携もありうる。まず反対しておいて、根底からの改革を考えるべきである。

・まだあまり資料を読んでいない。独立行政法人化問題について、具体的な論点を勉強したり、議論したりする場が必要だ。

・本学では、学長からの情報開示が少なすぎる。講座会議でも、きちんと議論する場を制度化すべきである。本学の個別の問題でいえば、単科大学が独立行政法人化されたらどうなるのかを、検討する必要がある。講座を基礎とした委員会で検討することが必要である。本学の実情に即した議論を、息長くする場があっても良いはずだ。

・今の時点で、反対を表明することが重要である。議論する委員会を設置し、学長の独走を止める必要がある。

・独立行政法人化した時点で、今の大学は大学でなくなり、専門学校になってしまうだろう。専門学校化してしまえば、いくら改革を議論しても意味がなくなる。独立行政法人化の本質をとらえて反対しておかないと、取り返しがつかなくなる。

・今の時点で、反対を表明することが重要である。反対の意思表示を学長に伝えて、学長が独走しないようにすべきだ。本学個別の問題と大学教育全般の二つの次元での検討が必要である。

・反対表明をしておく必要がある。独立行政法人化は自主的改革を進める上でも問題だ。文部省案をめぐる個別問題として、中期の研究目標やその評価は、本学にとってどのような意味をもつことになるのか、中嶋学長は学長会議の場で質してほしい。

・独立行政法人化が、大学の中で議論されないまま決められて行くことに不安を感じる。

・独立行政法人化案は、研究・教育のことを考えていない。あくまでも行財政改革の観点からの効率化の問題。国立大学を廃止するわけには行かないので、独立行政法人化して「自然死」を待つという方策であると考える。独立行政法人化に反対するのは、既得権に安住しようとしているからではない。研究・教育面での改革は急務だ。



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