独行法反対首都圏ネットワーク

日本の高等教育の民主的発展を阻む国立大学の独立行政法人化に反対する決議
(1999.11.7 [he-forum 320] 東京私大教連大会決議)

日本の高等教育の民主的発展を阻む国立大学の独立行政法人化に反対する決議

国立大学の独立行政法人化の動きが活発化している。
独立行政法人とは国家行政を企画・立案機能と実施機能に分離し、後者を担当する機関に独立した法人格を与えたものをいう。今回の場合、前者が文部科学省、後者が国立大学ということになる。目的は国の仕事の減量化と効率化である。独立行政法人通則法によれば主務省(文部科学省)による中期目標の設定、中期計画の認可など、国立大学に対する官僚支配が徹底されており、大学の自治や学問の自由を揺るがしかねないものとなっている。独立行政法人化自体の主要な問題点は以下のとおりである。

1.国立大学の独立行政法人化は高等教育の将来像に基づくものではなく、「行政改革」の一環として議論されてきた。小渕内閣は公務員数の25%削減を打ち出しており、その員数合わせのために国立大学教職員12万5千人を対象としている。教育機関である国立大学は、経済効率を重視し、企画・立案機能を分離するという今回の独立行政法人化には本来なじまないものである。

2.国立大学は独立行政法人化によって独立するのではなく、むしろ主務省による厳しい監督下に置かれる。独立行政法人通則法は次のように定めている。
 1)法人の長及び監事は主務大臣が任命し、また解任する。
 2)法人は主務大臣の定める3―5年の中期目標に基づき中期計画を定める。中期計画には主務大臣の認可を要する。
 3)中期計画の実施状況は主務省に置かれる「評価委員会」によって事後評価を受ける。この通則法の適用を受けるなら、国立大学は自らの将来計画を企画・立案できず、単なる実施機関にすぎなくなる。大学の自治も学問の自由もここには存在しない。

3.通則法によれば、政府は中期計画に従い法人の業務に必要な金額の全部または一部を交付するとなっている。しかしその配分は「評価委員会」の評価によって行われるため、配分に高低が生じ、国立大学間の格差が拡大する。独立行政法人化が行政改革の一環である以上、当面はともあれ、いづれは民営化を視野に入れた教職員数や交付金の削減が予想される。それは学費の値上げ、教育・研究条件の劣悪化につながりかねない。また主務省による法人の財政誘導はこれまで以上に容易になり、各大学は予算獲得のために主務省の顔色を窺うことになる。

4.文部省は通則法の規定を個別法によって緩和し、なるべく国立大学の現状を変えることなく独立行政法人化に移行させたいとしている。例えば学長の任免は大学からの申し出によって主務大臣が行うとか、中期目標の評価は「評価委員会」ではなく、国から独立した「大学評価・学位授与機構」が行うなどである。しかし、文部省の対応は小手先のその場しのぎでしかない。むしろ、主務省による中期目標の設定、中期計画の認可権、交付金の配分権によって、今以上に大学への支配・誘導が強化される危険があり、大学の自治と学問の自由が奪われかねない。予算執行等に多少の自由があったとしても、このような危険との引き替えであり、失うものは余りにも大きい。

国立大学の独立行政法人化は、先の大学審議会答申や先の国会で成立した「大学管理強化法」と連動し、政府の政策的大学管理の下で産業の再生・振興を主眼とする高等教育の再編を加速することは明らかである。独立行政法人化によって国立大学の自主性・自律性を高め、教育・研究の活性化を促すことができるなどという主張は空疎なものと言わざるをえない。
政府の高等教育に対する対応は、教育予算を抑制しつつ管理統制を強化するという点で一貫している。周知のように我が国の教育予算は、対GDP比や対国民所得比において先進国中最低水準である。そのような現状を放置したまま、更に高等教育への管理統制のみを強化する政府の政策は許されるものではない。国立大学の独立行政法人化は、その目的・内容からしてまさにこの流れに沿っての施策であり、それは憲法が保障する学問の自由と大学の自治(第23条)をないがしろにし、教育基本法が定める教育研究条件の整備をはかる国の責任(第10条)を放棄するものである。

独立行政法人化がもたらす事態は、私立大学を含む我が国の高等教育の民主的発展にとって、また学問の継承・発展にとって、さらには国民の教育権にとって重大な影響をもたらしかねない。
私たちは、大学の自治・学問の自由が保障されてこそ人類の平和と福祉に寄与する教育・研究の発展があり、また、高等教育予算を抜本的に増額し、私立大学を含む高等教育機関の充実をはかることこそが、我が国の高等教育発展の保障であるとの立場から、国立大学の独立行政法人化に強く反対するものである。

1999年10月30日
東京地区私立大学教職員組合連合第23回定期大会



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