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国立大学の独立行政法人化問題に関する日本学術会議会長談話
(1999.11.6 [he-forum 318] 学術会議会長談話)
日本学術会議の会長談話全文です。
http://www.scj.go.jp/data17-130-4.html
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国立大学の独立行政法人化問題に関する日本学術会議会長談話
平成11年10月27日
日本学術会議会長
吉 川 弘 之
現在,中央省庁等改革推進本部を中心に推し進められている行政改革の一環として,国立大学の独立行政法人化が急速に現実味を帯びだしている。文部省においてはもちろん,国立大学協会においてすらも,仮に国立大学が独立行政法人化される場合の制度設計等について踏み込んだ検討を急がざるを得ない状況にある。
しかしながら,研究・教育等の文化の創造に関わる活動は,通常の行政活動と異質なものであるから、行政改革・国営事業効率化の視点のみから拙速にこの問題に対する結論を出すならば,我が国の将来の高等教育・研究に取り返しのつかない禍根を残すおそれがある。日本学術会議は,この問題について深い関心を抱かざるを得ない。
これまで国立大学は長い伝統に支えられつつ,幅広い学術分野にわたるバランスのとれた連携によって,我が国の高等教育の発展に基本的な役割を果たすとともに,世界の学術研究に貢献してきた。併せて,全国各地域における高等教育の機会の保障,地域における学術拠点として文化の発展にも多大の貢献をしてきた。
日本の高等教育・研究の発展を考える場合には,国際社会の中で将来の日本をいかなる国にするのか,その中で高等教育・研究はいかにあるべきか,それを実現するためには,国公私立を問わず,いかなる大学や研究機関が必要で,いかなる人材が育成されなければならないか,また国の果たすべき役割,特に投入すべき国費はいかにあるべきかなど,国際性を含む広域性,先見性を含む長期性,社会・経済・政治・文化等多分野を視野に収めた統合性をもった将来構想に基づいた国策としての検討が見逃されてはならない。
国立大学自身による果敢かつ不断の自己改革は必要である。だが同時に,国立大学の独立行政法人化の検討に際しては,設置形態の変更に伴う制度設計の決定などを含め,高等教育・研究に係わる我が国の学術諸機関等の多様な意見を十分に聴取したのちに,慎重に進められることの必要性を強く訴えたい。