独行法反対首都圏ネットワーク |
国立大の独立法人化
地方大学存立の危機招く(11/3赤旗)
(1999.11.4 [he-forum 306] 赤旗記事より)
高等教育フォーラム読者各位
11/4/99
山大職組理学部支部書記長
すでにご覧になった方も多いと思いますが、11月3日付け「しんぶん赤旗」に、今回の山大職懇(11月13日〜14日於湯野浜温泉)でご講演いただく予定の福島大学行政社会学部教授の晴山一穂氏の「独法化」に関する小論が出ていましたので、ご紹介いたします。
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国立大の独立法人化
地方大学存立の危機招く
最近、国立大学の独立行政法人化に向けた動きが急速に強まっている。もともと独立行政法人(以下、独法という)という制度は、行政の減量化、スリム化のための方策として行政改革会議最終報告が打ち出した構想である。
先の国会で成立した独立行政法人通則法によってその法律上の骨格が定められ、すでに独法化が決まっている八十九の事業(試験研究機関や美術館など)についての個別法が、この臨時国会に上程される予定になっている。
当初、国立大学も独法化の対象のひとつとしてとりあげられ、その是非をめぐってさまざまな議論が交わされたが、今集一月の「中央省庁等改革に係わる大綱」では、「大学改革の一環として検討し、平成十五年(二〇〇三年)までに結論を得る」ことで当面の決着がつけられていた。
ところが、今年の六月、行政改革会議の有カメンバーであった藤田宙靖・東北大学教授が、ある法律雑誌(『ジュりスト』九九年六月一日号)で、国家公務員の二五%定員削減との関連で国立大学の独法化に向けた早期の検討が避けられないことを説いて以来、独法化に向けた動きがいっきょに加速度を加えることになった。こうした動きをうけ、文部省も、去る九月二十日の国立大学長会議で、一定の留保を付しながらも、国。立大学の独法化を実瓶する態度を公式に表明するに至った。
国立大学の独法化の問題点は、■長期的・総合的観点にもとづいておこなわれるべき大学の教育研究に本質的になじまないこと、■憲法二三条で保障された学問の自由・大学の自治を侵すおそれが大きいこと、■教育研究の基本的事項の審議・決定からその具体的実施まで一体的に遂行される大学では、独法が前提とする企画立案機能と実施機能の分離が不可能であること、などの点にある。
<改革とは無縁>
そして、全国の国立大学が、独立行政法人制度のねらいである経済効率性の観点にたった競争原理のもとに置かれることになるならば、その矛盾は小規模な地方国立大学に集中的に現れることになり、大学としての存立さえ危ぶまれる事態を迎えることになろう。地方国立大学が地域社会の中でこれまで果たしてきた重要な役割を考えるならば、このことは、地域社会にとっても大きなマイナスである。
このような問題を生み出す根源には、独法制度がもっぱら行政の減量化のための手段として考え出されたものであり、大学改革の発想から出たものではまったくない、ということがある。
藤田氏は、最近、「国立大学がなぜ独立行政法人ではだめなのかを立証する責任を負っている」旨の発言をしているが、もともと大学改革とまったく無縁な独法制度を一方的に大学に押し付けようとしているのは政府与党の側なのであって、なぜ大学側が独法ではだめなことの立証責任を負わなけれぼならないのであろうか。このような議論は、国立大学の存在意義そのものを否定する議論といわざるをえない。
多くの大学人は独法化に反対しているが、大学や学部として反対の声をあげている例は今のところ多くはない。これほど問題点が明白であり、個々人としては圧倒的に反対の声が多いにもかかわらず、である。ここには、ここ十数年来進められてきた文部省の大学「改革」政策のもとで、各大学が「生き残り」をかけて文部省に受け入れられる「改革」方策を必死に競い合っている、という現在の国立大学が置かれた深刻な状況がある。それは、リストラの脅威を前にして、なんとか自分だけはともがいている民間労働者の姿にも通じるものがある。
<生き残り競争>
いま、大学に求められているのは、いかにしてこの「生き残リ競争」の鎖を断ち切るかということであろう。そのためには、現在、個々バラバラの状況に置かれた各大学が横の連携をとり、独法化反対の声をいっせいにあげていくことが、まずなによりも必要となってくる。蓮實寅彦東大学長は、「国立大がみんなで独法になれば怖くない」という考えを、ビートたけしのギャグにたとえて皮肉ったが、今このたとえを借りるならば、「国立大がみんなで独法化に反対すれば怖くない」という発想こそ現在必要になっていると思われ
る。 そして、文部省や大学審議会の動きに一喜一憂することなく、学生・地域・国民に目を向けた地道な改革努力を重ねていくことが、今後一層強まるであろう国立大学解体の乱暴な試みを防ぐ最大の保証であるということを、改めて確認しておきたい。(はれやまかずほ・福島大学教授、行政法)