独行法反対首都圏ネットワーク

鹿児島大学教育学部教授会
「独立行政法人化の再考を求める」意見書
(1999.11.3 [he-forum 305] 鹿児島大学教育学部教授会の意見書)

1999年 11月 3日
フォーラムの皆様へ
田代@鹿児島大学です。
 鹿児島大学教育学部教授会は去る10月5日、国立大学の「独立行政法人化の再考を求める」意見書を田中弘允鹿児島大学長宛に提出しました。遅ればせながら、お知らせします。
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「独立行政法人化の再考を求める」意見書

鹿児島大学長殿

1999年10月5日
教育学部教授会

1)国立大学を独立行政法人化しようとする今回の動きは、大学改革の延長線上で提起されたものではなく、10年間で国家公務員を25%削減するという行革の方針がまずあり、それを最も定員数の多い公的機関の一つである国立大学に犠牲を強いることによって乗り切ろうとの意図にもとづいている。これは、本末転倒の議論であり、現在全国的に進められている自主的な大学改革の試みをかえって阻害するものであると考える。

2)独立行政法人化を進めるにあたって制定された「通則法」は、効率的な定型的業務の促進をうたい、企業会計原則の採用を求めている。たしかに、高等教育における効率性や自由競争の一定の重要性、社会と密接に関連し社会に直接的に寄与する研究の意義を否定することはできない。しかし、通則法の大学への適用は、非定型的で創造的な学術研究や社会から相対的に独立した基礎的な諸研究、学生・院生への非営利的な教育活動等を大きく損なう危険がある。また、通則法+特例措置で法人化をめざす文部省方針も、なお、検討すべき事項をあまりに多く残しているために、今後の政府・与党との折衝の中で限りなく通則法にもとづく措置へと近づいていく危惧を禁じえない。

3)通則法や文部省方針では、主務大臣が定める3〜5年(文部省方針では5年)の中期目標、主務大臣の許可を受けなければならない中期計画、主務大臣に届けなければならない年度計画、さらには主務省におかれる「評価委員会」による法人の業績評価、等々が提示されている。大学が自ら営む研究・教育の中長期的な計画を公にし、研究・教育活動の成果を定期的に厳しく自己点検・評価することには重要な意義がある。また、大学に対する社会からの批判や期待を謙虚に受け止め、管理運営や研究・教育にかかわる自己改革をなおいっそう大胆におし進める必要があると考える。だが、目標・計画・評価についての今回の措置は、その対象が教育研究だけでなく業務や予算にもわたり、従来にはなかった国立大学への新しい監視・統制の性格をもつために、大学の自主性や自立性を侵害する恐れがきわめて大きい。

4)設立にあたって法人の長を主務大臣が指名すると規定している「通則法」はいうにおよばず、評議会による学長選考をかかげている文部省方針も、これまでほとんどの国立大学が実施してきた学長公選制を否定するものであり、こうした上からの民主主義的な学内ルールの一方的な改廃は許されるものではない。

5)25%の定員削減を避けるために独立行政法人へと移行したとしても、今後法人化された大学の定員が守られる保証はなく、また、予算についても、行政コストを10年間に1/3削減するとの行革の方針が示されている以上、法人化された大学の定員や予算はますます縮減される心配がある。こういう不確定な見通しのもとでの独立行政法人化は、日本の高等教育に壊滅的な打撃を与えると考えられる。

――教育学部教授会は、今回提起されている国立大学の独立行政法人化が以上のような看過できない問題点を持っている、と考える。鹿児島大学長はこの意思表明を深く受け止められ、あらゆる機会に従来の批判的姿勢を広く学内外に訴えられるよう、強く要望する。



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