独行法反対首都圏ネットワーク

共生は切迫した課題になった/地域と大学
(1999.10 [he-forum 296] 南日本新聞社説)

『南日本新聞』1999年10月23日 朝刊

共生は切迫した課題になった/地域と大学

 鹿児島市の鹿児島経済大学が来春、国際文化学部を設ける。経済学部、社会学部と合わせて3学部体制になり、大学の名前も「鹿児島国際大学」に改めるという。
 鹿児島県内ではこの4月、鹿児島女子大が法学部を新設し、男子学生を受け入れた。これに伴い「志学館大学」と改名した。新しい名称がどの程度の清新さと存在感をもって響くか、評価はさまざまだろう。問題は中身である。期待を込めて見守っていきたい。
 全国的にみると、大学の挑戦は追い込まれて必死の攻めに転じた様相もみえる。大学の置かれた状況はそこまで厳しくなった。
 若年層の総体的な減少で学生数は減っていく。受験生が競争する受験地獄でなく、大学が生き残りをかけて競争する”冬の時代”に入った。
 気にかかるのは、大学間の競争が必ずしも公平な条件でなされないことだ。大学のあまりの非効率が口実にされ、公的な支援が削られる恐れもある。
 いずれも大きな問題だが、この際はひとまず置いて、地域の大学が地域とともに生きる可能性に注目したい。
 大都市のいわゆる名門校は、学歴を付与する装置だけに安住することはできなくなった。高等教育は大衆化し、社会の要請も多様化して、それだけで満足するわけにいかない。
 大学の序列については、国内の通念と外国の評価との間で大きくずれることは以前にも述べた。実は、世界的な評価自体も絶えず揺れ動いている。
 競争時代の大学は名前より実質を問われる。歴史の浅さや、辺遠の地に立地することが決定的な不利でなくなりつつある。
 逆に、地域にあることが有利な面も出てきた。その意味で鹿経大社会学部の観光関連学科新設の動きは評価したい。
 地域の需要を的確にとらえ地域とともに発展していく方向は、地域に立地する大学だからこそできる。この恵まれた条件を生かさない手はない。
 以前から叫ばれてきた”開かれた大学”は、いま切迫した課題になった。地域と大学が連携して共に生き残る道を探りたい。



目次に戻る

東職ホームページに戻る