独行法反対首都圏ネットワーク

国立大法人化 内部改革へ機を生かせ
(1999.10 [he-forum 295] 中国新聞社説)

小沢弘明(千葉大学)です。この手の議論への反論を考えなければなりません。

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国立大法人化 内部改革へ機を生かせ
'99/10/18

 全国九十九の国立大学は、いま重大な試練に直面している。もはや独立行政法人化の問題から避けて通れなくなっているからだ。文部省は来年度の早い時期にこの方針を最終決定し、国の行政改革が実動する二〇〇一年以降に呼応して対応する考えだ。いぜん反対論は根強いが、まず「内からの改革」に取り組むチャンスとしたい。

 有馬朗人文相が退任直前に発表した国立大法人化への方針は、人事や研究・教育に対する評価での自治の尊重など、大学の特殊事情に配慮した特例措置の制定を条件にしている。しかし各大学とも「大学の自主を損なう」として、特に現行の独立行政法人通則法に基づく法人化移行には反対だ。中国地方の六大学長も、この点では一致している。

 しかし法人化そのものについての是非論には、温度差がある。「大学活性化のための抜本改革は当然」(広島大・原田康夫学長)「学問の自由と自主を尊重するのなら選択肢の一つ」(島根医大・高折修二学長)から、「将来に禍根を残すとしか思えない」(山口大・広中平祐学長)「国の行革方針を当てはめるのは日本の学術、文化の崩壊に等しい」(島根大・吉川通彦学長)などさまざまだ。

 確かに法人化への動きは、省庁再編と公務員削減に連動した側面が強い。しかし「研究費など何でも横並びで、競争原理が働かない」「運営が不透明、非効率で改革にも消極的」といった批判が大学内部からもあった。折しも国の財政難、少子化傾向が強まるなかで、従来の学内体制にあぐらをかいてよいのか、と風当たりが強まっているのも事実である。

 もともと文部省は、法人化について積極的とはいえなかった。政治的な要請にも抵抗し続け、結論を二〇〇三年度まで先送りする方針だった。それがここにきて抗し切れなくなったのだ。しかし時代の動向を感じ取り、着実に改革と取り組んでいる大学もある。魅力と特徴ある大学づくりをテーマに、その方策と戦略を編み出し、具体化させる試みだ。

 例えば広島大では、まず「絶えざる自己変革」など五つの新理念を制定。新時代を(1)学生の多様化と大衆化(2)学問の高度化と複合化(3)社会の情報化と国際化(4)地域に開かれた大学、と位置づけ三十五項目の改革内容を提起し、毎年その実績を点検、評価している。その結果、具体化したのが教養教育の全学実施体制や転科転学部一〇%枠確保、学生就職センター開設、教育関係学部の統合、諸施設の整備などである。

 その広島大でも、地域主導の研究会や交流会への参加、教員の貢献度など地域社会との関係が他大学に比べ概して低い、という調査結果が出ている。広大に限らないとしても、事務関係職員が教官数の七五%に当たる実態も気になる。私立大では及びもつかない比率だ。

 法人化への具体的な詰めの論議はこれからが正念場である。国立大が国費でまかなわれている以上、大学の自治が内部のものだけであってよいはずはない。足腰の強い大学にするためにも、改革はまず内から進めたい。


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