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九州地区学長会議の状況(追加)
(1999.10.28)
平成11年10月8日
国立大学協会
会長 蓮実 重彦 殿
臨時九州地区国立大学学長会議
臨時九州地区国立大学学長会議を10月4日(月)、長崎大学において開催致しました。議題は「国立大学の独立行政法人化について」で文部省高等局遠藤純一郎審議官、合田隆史大学課長、杉野剛大学改革室長を迎えて意見交換を行いました。
会議の内容については別途報告致しますが、総意をもって下記の点を取り急ぎ要望することになりました。高等教育制度の基本の変更など、その重要性に鑑み、理事会において是非御検討頂き、御採択下さいますようお願い申し上げます。
1,現在、国立大学は歴史上、極めて重要な転換点に立っております。そして国立大学としての存続の意義が問われ、新しい設置形態のあり方を検討しています。このような状況下において国立大学は、総体として、存在の意義、貢献度、改革の現状などを具体的に国民に分かりやすく広報する必要があるものと考えます。国立大学協会・第一常置委員会で早急かつ繰り返し広報を行って下さいますよう要望します。
第一常置委員会が対応不可能であれば、広報委員会(仮称)を設け直ちに対応して頂くよう要望します。
2,国立大学の独立行政法人化問題については、多くの問題を含む設置形態の変革であることから、21世紀における我が国の教育研究のあるべき姿を含めて、文部省、国会議員(政府与党関係者など)及び国立大学協会が相互に協議する場を持たれるよう要望致します。
3,なお、文部省が万が一独立行政法人化を国立大学へ提示する場合を想定して先に第一常置委員会でまとめられました「国立大学と独立行政法人化」(中間報告)についてもさらに検討を進められますよう要望します。
以上
世話役 長崎大学
平成11年10月4日(月)に長崎大学において臨時九州地区国立大学長会議が開催され、あらかじめ各大学から提出されていた独立行政法人化の問題に対する質問等について文部省側から次のような説明があった。なお、この会議に文部省から、遠藤純一郎大臣官房審議官、合田隆史高等教育局大学課長、杉野剛高等教育局大学課大学改革推進室長の3人が出席した。
(遠藤審議官あいさつ)
9月20日の全国国立大学長会議において、独立行政法人化問題について、文部大臣、高等教育局長から、考え方の方向について説明した。諸般の事情からして、この問題について大学の十分な理解を得て基本的方向を早く固める必要があると考えている。20日の会議は、文部省から一方的な説明であったので、このブロック会議で大学側の意見を聞きながら理解を得ていきたい。
−高等教育の一貫性がないのでは−
(文部省)
我々は一貫した考え方に基づいている。昨年の大学審議会の答申においても国立大学の自主性、自律性のもとに、柔軟な教育研究組織、責任ある意思決定、多元的な評価等を提唱している。これらも臨時教育審議会の路線をひいているのであり高等教育の方向としては一つの方向である。独立行政法人化の問題もその流れの中で考えられるべきである。これまでは独立行政法人の中味が解らなかった。財政の心配もあった。こうしたことから、この問題についての結論は先送りした方が良いとの考えであった。この春になって、独立行政法人の指針、制度設計、財政も明らかになってきた。公務員の定員削減の問題も徐々にはっきりしてきた。(10年間で25%。これがストレートに国立大学に適用されると甚大な影響を受けることになる。)こうしたことが背景にあって、今の時点で真剣に検討すべきであるということになった。こうした状況を踏まえてどうすべきかという階段を登ったということである。平成13年度から10%の定削の実施となると12年度の早い段階で政府は定削の実施方針を決めないといけないことになる。
いずれにしても、大学改革の一環として検討することが大事である。
−評価、財政について−
(文部省)
評価については、中期目標、中期計画をつくり、これを5年後に評価することになっている。文部省に置かれる評価委員会は、第3者評価機関(現在立ち上中)の意向を尊重して多元的な評価を行うことになる(学部については研究評価、教育評価、大学全体としては、課題別の評価)。財政については、原則として独立採算を前提としていない。必要な経費は従来の積算を基礎として配分されることになると思う。
−研究面が重視されるのでは−
(文部省)
評価は多元的に行われることになっているので、研究だけで評価されることはない。
−立法形式について−
(文部省)
現在においては、国立大学にとって制度として、どのような特例を設けていたら良いのかということを考えている。文部省としては、こうした特例を設ければ、大学としてうまくいくことであれば、関係方面と折衝することになる。全部うまくいくことは難しいと思うが・・・。折衝の後、法律の形態について、法制局と詰めていくことになる。意見として、通則法全体が国立大学に合わないので、第3の道をということもあるが、これはなかなか難しい。
−独法化によって、日本の科学水準の維持は大丈夫か−
(文部省)
水準の維持のためにも必要であり、プラスになると考えていかなければならない。独法化になったとき、又は、ならなくても、大学も文部省も努力しないといけない。
−独法化により、大学の自主性、自律性は制約されるのでは−
(文部省)
法人格を持つこと自体が自律性を持つことになる。しかし自己責任も大きくなる。予算の使用、給与も大学で自由に決められる。授業料も直接大学に配分される。学部、研究科は法令で決めることになるが、学科、定員等は大学で自由に設置できるようになる。中期目標、計画も大学の自主性を重んじるようにしていきたい。文部大臣が勝手に決めるのではなく、大学の意見を尊重していくことになる。
−国立大学でなく独法化でなければならない理由は−
(文部省)
現在の状況としては、厳しいぎりぎりの段階として受けとめて検討しないと・・・。この問題を検討しないで済むような段階ではない。平成9年に独法化の話があったとき、文部省は、国立大学には相入れないと説明した。長期的課題であるとした。しかし、国立大学も正すべきところは正す必要があり、改革を進めるということで閣議決定された。その間、大学審の答申もあり、それに対する法律も改正した。これで一応かたづいたと思っていたが・・・。
しかし、また、この問題についての意見が出てきた。全部の国立大学がだめなら一部ではどうかというような意見もあった。その背景には、イコールではないが、定削の問題がチラチラしていた。独法化に移行するようにと言われていたわけではないが。(総務庁、自民党)。
今年の1月になり、国立大学の独法化の問題は、平成15年まで大学改革の一環として結論を得ることになった。入試センターについては、他の国立の研究機関と一緒に検討し、速やかに結論を得ることになった。他の共同利用機関は、大学と一緒に結論を得ることになった。これから詳細な検討が必要であるが、「大」が決まらないと「小」も決まらない。「大」を早く決め、押さえておきたい。「大」の方向はこちらだということが9月20日の会議であった。「大」を決めて次の段階を詰めていく。定削の問題もあり、早く方向を決めないと。
仮に平成16年度から独法化されるとしてもそれまでの間は国立であり、定削がかかってくる。独法化への方針をきめていると、定削の大綱を決める時、国立大学は0にしてくれとかということも相談も・・・。定削の10%〜25%という問題もあり、腹を決めないといけない。こうしたことから文部省の考えを早く示したいということだ。
−文部省の説明している特別措置のどの部分を死守するのか−
(文部省)
特例措置の検討についての説明の中では、どの部分を死守するという表現はない。文部大臣が話したことがそういうことだ。
−検討の方向としては、今より金も増えるのか、元気になるのか−
(文部省)
おっしゃるとおりです。これまでも他の省庁と比べて国立大学にお金がいくように努力してきた。これからも努力したい。独法化とは別問題として、これまでのように護送船団方式ではやれないが、各大学の努力いかんにかかっている。トータルとしては頑張りたい。
−こうした独法化の問題の議論が密室で行われているのではないか。もっとオープンにして国民的議論を−
(文部省)
たしかにこうした議論は、これまで行政改革の中で行われてきた。意見を言うことができない面もある。しかし、国立大学に対して暖かい風が吹いているとは全然思えない。国会議員に説明に行っても、国立大学に対して厳しい意見が多い。議員の7〜8割は私学に向いている。国立がだめになると国がだめになると思う。
−わが国の科学者の数は、どの位必要なのか試算したことは−
(文部省)
必要な数を試算したことはない。
−法人の業務の範囲は−
(文部省)
大学が教育研究を遂行できるように、業務の範囲については、広範に展開できるように書きたい。具体的には、これから詰めていきたい。
−業務方法書に定める業務は−
(文部省)
大きな方針が決定した後で詰める。
−監事について−
(文部省)
監事については、法人と少し離れた人でないといけない。通則法に従って考える。大臣が任命することになるが、複数置くことになる。全員が常勤である必要はない。人数は法人の規模に応じた数になる。
−運営会議−
(文部省)
大学審答申の中には出てくるが、法律では規定していない。しかし、法律では運営会議という名称は使ってないが、運営組織の確立という中に含まれている。法人化になれば学長の責任あるリーダーがますます必要になってくるので、運営会議も大事な機関だと思う。学長のブレーンとして・・・。
−中期目標、中期計画−
(文部省)
システムの具体的なものは、これから詰めることになる。目標の作成の段階から大学の意見を聞いていくことになると思う。個別の教員の研究等に踏み込んで作るというものではない。
−各評価組織の位置付けは−
(文部省)
客観性を保つためのダブルチェックということである。総務省に置かれる委員会は各省庁の行う評価が適正かどうかをチェックするものである。
−中期目標の達成の評価は−
(文部省)
評価機関等で教育研究の評価システムを考えることになる。
−局長人事は−
(文部省)
大臣が任命するのは法人の長と監事のみである。局長は法人の長が任命することになる。しかし、法人間の異動が円滑にいくように今後検討する。
−給与について−
(文部省)
大学において決めることになる。大学毎の給与体系ができることになる。普通の公務員の給与を横目に見ながら法人毎に決めていくことになる。法人間に著しい格差は生じないのでは・・・。
−定員について−
(文部省)
普通の国家公務員は、平成13年度から10年間で10%削減されることになっている。これは12年度末の定員をもとに計画される。12年度末の定員をもとに13年度から削減することになると国立大学も10%の削減の対象になる。具体的にどういう削減率になるか12年度の早い段階に決まると思う。独法化の問題も念頭に置きながら削減率の交渉に入ることになる。
−財務について−
(文部省)
総務庁の大田長官の国会答弁では、法人化されると、その時点で当面これまでの財源は確保していくと述べている。20日の会議において文部大臣は、国立大学の施設の老朽化は著しい。世界に通用するためには施設の整備が必要であると述べている。今後とも予算の中で十分意を用いていきたい。
−コスト削減について−
(文部省)
4月の閣議で30%のコスト削減が決定している。詳細については分かっていない。
−授業料について−
(文部省)
法人の主旨から言って授業料等の自己収入は各大学が管理することになる。他方において、一部の大学が安易に授業料を引き上げることになると、これまでの機会均等ということからしても問題がある。法人化しても独立採算制を取るわけではないので、国立大学としての役割は変わらない。
−国家賠償法の適用について−
(文部省)
法律の中では、国という範疇に含まれる。国家賠償法が摘要される。訴訟がおこっても、これまで通り、法務大臣との関係が維持される。
−複数の大学が一緒になって一つの法人化にされる可能性は−
(文部省)
それぞれの大学が責任をもって一つの法人ということになっている。一緒になって法人になるということであるが、その時は一つの大学になってもらうことになる。理事会的経営はしない。大学そのものが法人化する。文部省から再編したらどうかということは言われないが、大学の方から一緒になると言うことであれば、それなりの手順を踏むことになる。相談にはのる。
−法人化については国大協は反対している。文部省の考える法人化は、通則法にもとづくものか−
(文部省)
通則法をにらんでのことだ。通則法をはずれていない。国立大学にとって何が良いのか、通則法のスキムの中で特例を設けるようにと考えている。
−評価のイメージは−
(文部省)
正直に言って、どのような中期目標にするかについての共通のイメージはまだない。現在の概算要求と何かプラスされるようなものか? 計画の変更はあるか、5年間の目標、計画のイメージはまだだ。
−計画等の提出で事務組織はさらに繁雑になるのでは−
(文部省)
むだなエネルギーを費やすようなことは避けたい。しかし、目標、計画のある程度のことは国民に提示しなければならない。
−今後の予定は−
(文部省)
来年の早い時期までに方針を決めることになる。決めるまでの間に大学に対して案を示すことになる。事前に説明する。
−これからの質問等はどこに−
(文部省)
大学課の大学改革推進室にお願いしたい。
(遠藤審議官の終わりのあいさつ)
いずれにしても大変革である。いろいろ御心配の点があると思う。どうやったら、全体として良い方向にもっていけるか。これを手がかりとして、いろいろ工夫し、汗をかき頑張りたい。その結果として出てくるような仕組みを求められている。トータルとして日本の大学が力を落とすことでは困る。知恵を出して頂きたい。