独行法反対首都圏ネットワーク

9月20日以降の情勢について
(1999年10月6日 首都圏ネットワーク事務局)

1. 今後の政治日程

1999年

10月末までに各地区毎の大学長会議で意見を集約

10月 独立行政法人個別法国会提出

  省庁改革関係法施行法案国会提出(新体制移行に伴う関係法律の整備)

11月17〜18日 国大協総会

2000年

初頭、国立大学について文部省としての方向付けを行う

1月 独立行政法人会計基準研究会報告

  総定員法の改正法案国会提出

4月 通則法・個別法等関係政令制定作業

7月 通則法・個別法等関係省令制定作業

  定員削減計画策定

2001年

1月 新府省発足

4月 独立行政法人への移行(83事務・事業、ただし統廃合で50〜60に)

7月 国立大学の法人化について通常国会で法案提出(科学新聞の観測では、2003年まで制度設計は続き、早くとも2004年に独法化)。

2. 政府・文部省の動向

 (1)学長会議(地域ブロック)に向けた意見の集約、日程判明(情報収集の要あり)
 北海道 10月8日 東北 10月25日〜26日 関東・甲信越 10月29日 東海・北陸 10月5日 近畿 10月15日 中・四国 11月4日〜5日 九州 10月4日

 (2)中央省庁等推進本部第15回顧問会議(1999年9月21日)

 ここ(http://www.kantei.go.jp/jp/komon/990924dai15.html)に、文部省案についての若干の議論のやりとりが書かれている。中央省庁改革推進本部の構えとしては、国立大学の例外措置については、文部省案がさらに具体的なものに固まった段階で、検討するという。ということは、文部省案をもとに議論をしても、それがそのまま通る保証はどこにもない。
 ・自民党内に専門チーム(時事通信9月23日速報)
 ・総務庁の動向にも注目(中曽根弘文文相、公明党続訓弘総務庁長官のコンビ)
 ・文部事務次官の懇談会での発言

 (3)定員削減計画と法人化
 総定員法の改定法案国会提出が2000年1月、定員削減計画策定が7月となっている。
 これが、文部省が独立行政法人化の方向の結論を2000年早々に出そうとしている理由。

 (4)先行する「独立行政法人」の現実
 ・「独立行政法人会計基準研究会」が総務庁(政務次官が出席)を中心に、すでに3月〜8月に6回開かれ、9月20日に第7回が開催された。これらの「先行」する法人化の動向に注目する必要あり。制度設計の現実が次第に明らかになる。議事録は公開
 ・中央省庁等改革推進本部顧問会議が、先行86国立機関に対して考えている個別法案の骨子   
  (http://www.kantei.go.jp/jp/komon/dai15append/siryou2.html)=極めて「シンプル」。通則法を個別法で制限するなど不可能

独立行政法人個別法案等について

1.趣旨

 先の国会で成立した独立行政法人通則法及び4月の閣議決定に基づき、各々の独立行政法人の設立に必要な事項を定める個別法案及び関係法律の整備のための法案を立案する。

2.主な内容

 ○閣議決定において独立行政法人化することとされた89事務・事業のうち、平成13年4月に設立予定のもの等86事務・事業を担う法人について、各々の法案において (1) 名称、(2) 目的、(3) 業務の範囲等を定める。
 ○また、これに伴い、独立行政法人の業務実施の円滑化等のため、関係法律について一括して所要の整備を行う。

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独立行政法人個別法案のイメージ

第一章 総則
 一 法律の目的
  ○この法律が、独立行政法人の名称、目的、業務の範囲等を定めることを目的とする旨定める。
 二 法人の名称
  ○具体的な法人の名称(独立行政法人○○研究所等)を定める。
 三 法人の目的  
  ○法人の設立目的を定める。
 四 特定独立行政法人
  ○役職員が国家公務員身分を有する特定独立行政法人である場合はその旨を定める。
 五 主たる事務所
  ○法人の主たる事務所の位置(原則都道府県ベース)を定める。
 六 資本金
  ○政府からの出資金等をもって法人の資本金とすること等を定める。
  ○併せて、政府からの追加出資があり得ること、その場合、法人は増資するものとすることを定める。

第二章 役員及び職員
 七 役員
  ○役員の名称(理事長、理事等)及び定数を定める。
 八 役員の職務及び権限
  ○個々の役員の職務及び権限を定める。(例えば「理事は、理事長の定めるところにより法人の事務を掌理する。」等。)
 九 役員の任期
  ○理事長、理事等役員の任期を定める。

第三章 業務等
 十 業務の範囲
  ○法人が行う業務の範囲について定める。
 十一 積立金の処分
  ○中期目標の期間の終了時に存在する積立金の処分方法について定める。

第四章 雑則
 十二 主務大臣等
  ○中期目標の指示、中期計画の認可等を行う主務大臣、主務省及び主務省令を定める。

第五章 罰則
 十三 罰則
  ○法人の業務以外の業務を行った場合の罰則等を定める。

附 則
 一 施行期日
 二 職員関係
 三 権利義務の承継等
 四 関係法律の一部改正等

 (5)評価機関の問題
 ・中期目標の実施状況や達成度などを評価する機関は、2000年度に発足する「大学評価・学位授与機構」を想定している。数千人規模の大機関になるという情報もあり。大学評価機関(仮称)創設準備委員会中間報告は、
 http://ha4.seikyou.ne.jp/home/kinkyo/Alink_hyoka.htm
 を参照。これも現実化すれば、相当重要な役割を負う機関に

3. 各大学の動向

 ・全学説明会の開催(名古屋大学、山梨大学など)
 ・積極論の表出(北見工業大学、北大など)
 ・学長メッセージ(千葉大学)
 ・評議会で反対再確認(宮崎大学)
 ・学部単位での立場表明(北大理学研究科・理学部)
 ・学科単位での反対論(宮崎医科大学脳神経外科)
 ・個人単位での反対論(北大数学辻下、三重大学ドイツ語井口)
 ・文部省の説明会(2日、信大経済学部の学部創立20周年記念式典 文部省の合田隆史大学課長が「大学改革の現状と展望」と題して講演、国立大の独立行政法人化への理解を求めた―信濃毎日10月3日付)
 ・千葉大学学長、組合との緊急懇談会に応じる

4. 各種論説の特徴

 (1)「拙速」批判、「数合わせ」批判(各紙)

 (2)「国家百年の大計」(西日本新聞、琉球新報)

 (3)貧困な教育費の指摘(各紙)

 (4)特例法の要求(東京新聞)

 (5)統廃合、信用力格差 (日本経済新聞9月20日、週刊朝日ボーダー論)

 (6)大学改革の機会に(朝日、徳島、愛媛他)

 (7)「民尊」の思想に立ち返る機会(日経21日春秋)

 (8)通則法評価(「基本構造が特例で骨抜きになってはならない」読売)

 (9)その他、文化財は国有(共同通信)、「国立」名称問題で対立(読売)、大学運営そのものの変化(経営感覚、科学新聞)、学長選挙の廃止(読売)

5. 反対運動の展開

 (1)各種声明 (8月10日日本科学者会議、9月1日全大教要請書)
  大学教職員組合の反対決議、申し入れ書
  9月8日 北海道大学、東京大学
  9月10日 京都大学、鹿児島大学、佐賀大学、島根大学
  9月11日 信州大学
  9月13日 和歌山大学
  9月14日 一橋大学
  9月20日 全大教、茨城大学
  9月21日 大阪大学
  9月22日 東北大学
  9月24日 群馬大学、長崎大学、日大教談話
  9月27日 高知大学
  9月29日 九州大学
 10月4日 愛媛大学、神戸大学、岐阜大学
 10月6日 千葉大学

 (2)その他

・学習会
 9月22日、10月4日佐賀大学、28日名古屋大学、茨城大学、30日弘前大学、10月1日九州大学、京都大学、10月2日国公労連(大阪) 行革学習決起集会、、10月2日東京地区大学教職員組合協議会(都大教) 日本科学者会議東京支部(JSA)学習会、10月7日大学審答申反対京都連絡会、10月9日大学図書館問題研究会千葉支部大会 10月14日山梨大学・国立大学の独立行政法人化に反対する学習会

・全学連第50回中央委員会(10月2〜3日)特別決議

・歴史科学協議会1999年度総会(9月25日)で反対声明採択

・『世界』10月号(岩崎稔)『歴史評論』11月号(小沢弘明)『歴史学研究』10月号月報(栗田禎子)、11月号月報(東京国立博物館山本勉)

・11月1日未來社より緊急出版、『漂流する国立大学―独立行政法人化という野蛮と文化の未来』(仮題)

・『科学』(岩波書店)が「独立行政法人化」問題で緊急特集号を作成中

・日本評論社が緊急出版を計画中

・緊急出版 JSAブックレット国立大学がなくなるって、本当?!―独立行政法人化Q&A― 10月10日発行 日本科学者会議編 水曜社刊/本体価格700円

6.現情勢の特徴と反対闘争の方向

 この項はさらに検討を重ね、10月中旬までに首都圏ネットワークの声明と行動提起を出す予定であるが、とり急ぎ、重要点を指摘する。

 9月20日以降の情勢の特徴は、
 (1)文部省案が通則法を拘束するものでないこと、文部省案自体も連立政権や総務庁によって受け入れられる保証はまったくないこと、中央省庁等改革推進本部顧問会議が先行86国立機関に対して考えている個別法案の骨子を見ても個別法で問題点をブロックするなど不可能であること、が明らかになったことである。
 (2)勇気ある反対行動や発言が出され、反対運動も拡がりつつあることである。かくて、当初目論まれた9.20政治決着は完全に破綻した。
 (3)先行独法化のための準備が急ピッチで進められ、かつ、中央省庁等改革推進本部の政治プログラムとスケジュールが鮮明になってきたことである。

 これらの特徴は、我々が特例法だとか文部省案(事実上の独法化露払い)に惑わされず、独立行政法人そのものへの闘争へと突き進むことを要求している。そのためには、(1)独法化が大学をどのように改変(解体)するのか、研究、教育、財政(会計を含む)、教職員組織、大学運営と経営などについて専門家の意見も聞きながら、明らかにし、わかりやすく描ききらねばならない。(2)生存競争の論理への転落を阻止し、全国の大学が結束して事態に対峙するよう運動を質を高める必要がある。

 当面する課題としては、
 (1)各大学での文部省案批判活動の深化と学内的、地域的、全国的連携の強化、文部省案拒否戦線の構築
 (2)各大学で学長に反対の立場を取ることを要求する→地区学長会議
 (3)11月国大協総会に対する要求を急ぎまとめる

【補】 「幻想を打破り、誤解を解いて、行動へ」
   ―次のスローガン(キャプション)が出されました。良いキャプションをつくりましょうー

三つの幻想
 1)独立行政法人化することにより、外部資金の導入が活性化され、自由に使える研究費が増える。
 2)独立行政法人化によって定員削減の対象から外れるし、国家公務員なら安心だ。
 3)実質的な研究体制や環境は5年後の評価まではそれほど現状と変わらない。

三つの誤解
 1)文部省は特例法を示した。
 2)今や条件闘争に移らなければならない。
 3)文部省案は「落としどころ」だ。

三つの行動
 1)「私たちが情報を発見し、徹底的に開示しよう。
 2)ネットワークを作ろう。
 3)理念を語ろう、対抗宣言を構想しよう。


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