独行法反対首都圏ネットワーク

公明新聞の6月2日付主張
(99.10.10 [he-forum 211] 公明新聞6月2日付)

 既知の情報と思いますが、新政権党の基本政策をいま一度確認しておくために、公明新聞の6月2日付主張を掲げます。

小沢弘明(千葉大学)
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独立行政法人の論議深めよ
民営化、解散など合理化の方途示せ

1999年6月2日付

『「切り札」と成り得るか』

 政府提出の中央省庁再編関連法案をめぐる論議の中で、行政機構スリム化の「切り札」として導入予定の独立行政法人の在り方が、論点の一つとなっている。
 これは、政府の事業執行部門を本体機構から切り離し、国とは別の法人格を与えるものだ。独立行政法人は事業運営を効率化するために企業会計を導入。三〜五年の中期目標を設定し、その終了時には総務省(総務庁、自治、郵政両省を統合して二○○一年に新設予定)に設置される第三者機関が業績評価を行う。これを受けて担当省庁の大臣が、組織改革などを行うことができる。財務諸表や評価結果の公表も義務付けた。

 先に閣議決定された「行政組織のスリム化計画」には、国立の病院、研究所や美術館など独立行政法人へ移行する九十の機関・業務が明記されている。単年度予算の細かい縛りが解かれて、三〜五年の視野で計画的に事業運営ができるようになったことは、研究所タイプの独立行政法人にとっては個別的にプラスの効果をもたらすかもしれない。ただ、この制度全体として、行財政改革にどの程度役立つかは未知数だ。

 政府は十年間で国家公務員定員の二五%削減を目標に掲げ、その柱に独立行政法人を位置付けている。自衛官を除く国家公務員の定数は現在約八十五万人。郵政公社に移行する三十万人が削減対象から外され、残り五十五万人の二五%、十四万人を削減しなければならない。今回、独立行政法人へ移行することになった職員約七万四千人で削減数の半分をカバーすることになるが、それでも達成への道のりは遠い。加えて九十機関・業務のうち、八十六機関・業務が国家公務員の身分を維持することになっており、実質的な公務員削減と言えるのか疑問だ。

 第三者機関が業務評価を行うことによって効率化が促進されるかのような印象を与えるが、評価結果によっては、廃止・存続あるいは民営化といった抜本的な合理化に踏み込む道筋を示すべきだ。そのための基準を明確にして、どのような場合に廃止されるのかを示す解散規定がほしい。民営化を避けるために独立行政法人へ駆け込んだようなケースもあったが、解散規定によって経営合理化の厳しさを求めなければ、何のための新制度導入か分からなくなってしまう恐れがある。

 独立行政法人はもともと、英国のサッチャー政権が一九八八年に取り入れた「エージェンシー」(外庁)制をモデルにしている。英国では政府の担うべき事業の範囲を徹底的に見直し、規制緩和を推進する大きな流れの中で、外庁制が導入されたことが重要だ。日本の場合、国直轄の公共事業の地方移管が挫折したことに象徴されるように、政府の本来担うべき事業が、絞り込まれたとは言えない。

『形を変えた政府機構の肥大化』

 このままでは、新しい法人制度が中央集権体制を維持したまま政府機構が形を変えて外に広がるだけに終わる可能性もある。今は影に回っているが、独立行政法人の移行予定人員をはるかに上回る約四十八万二千人の人員を抱えた特殊法人の問題を忘れてはならない。特殊法人には平成十一年度一般会計から二兆千四百億円、財政投融資から約三十六兆六千六百億円ものカネが投入されている。長引く不況の中で政府系金融機関の役割が強調され、見直し論議が冷めてしまった感もあるが、抜本改革の必要性は変わっていない。独立行政法人を第二の特殊法人にしないために、何をなすべきか。今こそ真剣な論議が求められている。



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