独行法反対首都圏ネットワーク

悔い残さぬ法人化論議に
(99.9.19 山陽新聞社説)


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◇悔い残さぬ法人化論議に

 国立大学を国の行政組織から切り離して独立行政法人にする問題で、国立大学協会は反対の考えをあらためて表明。「仮に法人化する場合は大学の自治を確保する特例措置が必要だ」との中間報告を公表した。
 一方、同様に反対の立場にあった文部省は大学自治の尊重を条件に事実上容認する意向を固め、二十日の国立大学長会議で独自の検討案を示して国大協に再考を促すという。一つのヤマ場を迎えようとしている。

 独立行政法人の基本ルールを定めた通則法では「法人の役員は主務大臣が任命する」「大臣が三―五年間の中間目標を定める」「主務省などでつくる評価委員会が業績を評価し、業務を継続するか否かを検討する」となっている。

 国大協は「そのままの適用は大学の自主性を著しく損なう」と国立大学法など法律に基づく修正を主張する。具体的には「学内に評議会組織を設けて学長の選考を実施する」「業績評価は大学独自の外部評価機関を設ける」などといった内容である。

 独立行政法人は、政府が中央省庁再編に伴う行政スリム化の″目玉″の一つとして打ち出した。予算の使途などに自由裁量を認めるが、コスト削減や人員の適正化など経営努力が求められる。

 業務によっては簡素・効率化が期待できる。しかし、そのまま大学に適用するにはいささか無理との論議がある。教育・研究は長期的な視点に立って取り組んでおり、短期間に成果が出るものばかりではない。効率性という物差しだけでは測れない。

 大学はまた政府と一定の距離を置いて自由に学問を究める場でもある。自治の確保は大学の存立の根幹にもかかわる。その点で中間報告の要求はもっともなことと大学寄りの意見も強い。

 国立大の独立行政法人化は政府の中央省庁等改革推進本部で検討されたが、文部省や大学側が強く反対。今春閣議決定された中央省庁改革推進大綱では「二〇〇三年までに結論を得る」と先送りされていた。

 その再論議が高まったのは、行政改革に絡んで政府が二〇〇一年から十年間で国家公務員の二五%削減を打ち出したことによる。国家公務員の一割強に当たる教職員を抱えている国立大の動きが、削減目標の達成に大きく影響するからだ。「数合わせ」との感じはぬぐえない。

 国立大にも問題点はある。私学とは違う安定した環境の中での活力の喪失や閉鎖性などが指摘される。何を目標に、どういった教育や研究を行っているか。その成果などを国民に明らかにすることは大切といえよう。

 大学の個性化、教育・研究の質的向上への努力が求められる。近年、大学再生への動きも見え始めた。岡山大は、昨年秋に「二十一世紀の岡山大学構想検討会」を設け将来像づくりに取り組んでいる。この流れを強め、時代のニーズに応じた地域に開かれた大学づくりを目指してほしい。

 国立大は地域の教育・研究の核として、二十一世紀を担う人材を育てるとともに文化や科学などの発展を図り、成果を国や地域に還元していく使命を背負っている。国、大学ともその「重さ」を認識し、国民の期待にこたえ得る国立大学像を示すよう悔いなき論議を望みたい。


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