独行法反対首都圏ネットワーク

大学の独立自治守れるか
(1999.8.31 佐賀新聞 論説)

 全国の国立大学を独立行政法人化するための論議が本格的に始まった。文部省は今月十日、有識者による懇談会を発足させ、国立大学協会(会長・蓮實重彦 東大学長)も検討に着手した。 独立行政法人化は、国の行政機関から現業やサービス部門などを独立させ、民 間の経営手法を取り入れることで効率性を高め、行政組織のスリム化を図るの が目的だ。

■問題先送りのはずが

 これまで文部省や国立大学は「教育や研究は効率性の観点になじまない」と、 独立行政法人化に反対していた。中央省庁改革推進大綱でも大学についての結論は二○○三年までに出すと、問題を先送りしたはずだった。 ところが小渕内閣が行革の目玉として国家公務員を二○○○年度から十年間で二五%削減する方針を打ち出したことから、十二万五千人の教職員を抱える国立大学の存在が再びクローズアップされることになった。各省庁は来夏の概算要求までに具体的な削減策を求められており、文部省も国立大学の独立行政法人化を検討せざるを得なくなったという事情がある。 独立行政法人に移行すれば、総定員法でいう定員に含まれず、公務員削減計画 の対象外となる。反対を続けて二五%カットの対象となるより、法人化によって極力影響を小さくするという思惑が働いたようだ。 国際化や専門化が進む中で、将来の教育研究はどうあるべきか、そのためには 国立大学をいかに改革すべきか、ということと、公務員の定数削減とは本質的に異なる問題である。まず人員削減ありき、という至上命題のもとに大学の在り方を論じるのは筋違いではないか。無論、国立大学の予算が国費でまかなわれる以上、人件費を含め無駄な出費を 抑える努力は必要だ。だが、教育研究を効率中心に評価するという姿勢は気になる。

■研究活動保障は困難

 先の国会で成立した独立行政法人通則法によれば、企業会計の導入や代表への 人事権付与など独立性が高まる面も確かにある。だが、文部科学相が各法人に三−五年の中期目標を指示し、法人はその目標を 達成するために中期計画を作成、認可を受けなければならない。そして、文部 科学相は「評価委員会」の意見を聴取することになるが、主として効率性の観 点から教育研究実績が評価されるという。こういうシステムのもとでは大学の 自律的教育研究活動を保障することは困難だ。三−五年の期間内で目に見える成果を挙げないと、研究継続が保障されないと いうのでは、何十年もかかる基礎研究への取り組みなど存在し得なくなる。 公務員削減の数合わせの結果、日本の学問研究を衰退させるようなことは断じて避けなければならない。 各大学の運営方針は、大学自らが主体的に決めるべきものである。国立大学を 独立行政法人にするというのであれば、まず大学の独立と自治を保障しなければならない。文部省の有識者懇談会や国立大学協会は国立大学の独立行政法人化の論議を進 める際に、国民に情報を積極的に公開すべきだ。(原 徹雄)


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