独行法反対首都圏ネットワーク

危うい大学の独立性/独立行政法人
(1999.9.10 南日本新聞 社説)

 国立大学を国の直轄運営から切り離し、独立した法人組織にすることを、文部省が容認する意向を固めた。行政改革に伴う大学の独立行政法人化である。
 独立行政法人化は、国の行政機関のうち現業やサービス部門などを、経営感覚を持った別個の法人組織にすることで効率性を高め、行政のスリム化を図るのが狙いだ。すでに博物館や研究所といった国立の機関が独立行政法人に移行することが決まっている。
 背景に、中央省庁再編が始まる2001年から10間に国家公務員の定員を25%削減する計画がある。学生数が減る中で12万5000人の教職員を抱える国立大学にも目が向けられることになった。
 しかし、法人化からは積年の課題である大学改革の展望が見えてこない。21世紀の大学はどうあるべきか、どんな役割を担っていくのか、明確に示せない現状では、単なる公務員削減の数合わせに終わる恐れがある。
 国立大学は今、多くの問題を抱えている。継続性のない単年度制の研究予算 意思決定機関のぜい弱さ、幹部事務職員の人事に及ぼす文部省の影響力などである。これらの弊害を見直す必要があるのだが、割り引いてみても法人化を急ぐ理由は見いだしがたい。
 先の国会で成立した独立行政法人通則法によれば、所管大臣が学長など法人の役員を任命し、達成すべき中期目標を定めることになる。さらに所管省に評価委員会を置き、効率性の観点から教育研究実績を評価する。
 しかし、効率性だけで評価するシステムになると、社会的な効用が目に見えにくく、息の長い取り組みが求められる基礎研究がないがしろにされる心配がある。大学の運営も政府の関与の度合いが強まり、独立行政法人設置の趣旨に逆行する結果を招きかねない。
 自由で多様性に富んだ教育と研究を続けるには、なにより大学の自治が保障されなければならない。それぞれの大学が運営方針を主体的に決め、教育と研究の長期方針を定める自由を確保することこそ最優先させるべきだ。 法人化が避けて通れないというなら、通則法をそのまま当てはめるのではなく、新しい形の研究教育法人を構想するのが筋だろう。その際は、少なくとも大学の独立性がこれまで以上に広がることを念頭に置きたい。


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