独行法反対首都圏ネットワーク

国立大法人化、人事、評価で自治尊重
文部省案まとまる 来年4月決定
(1999.9.21 [he-forum98]高知新聞の記事です。)

(見出し)
 国立大学の独立行政法人化問題を検討していた文省は二十日、人事や研究に対する評価での自治の尊重など大学の特殊事情に配慮した特例措置の制定を条件に法人化を進める文部省案をまとめ、有馬朗人文相らが同日の国大学長が参加した会議で説明した。今後、国立大学協会や政府、与党と調整し、二〇〇〇年四月をめどに独立行政法人化を決める方針だ。

(本文)
 文部省案は特例措置のほか、九十九の国立大をそれぞれ一法人とし、職員の身分を公務員型にするなど、現在の形態に沿った内容。自民党からは早くも「抜本的な見直しをする気が本当にあるのか」との厳しい声が上がっており、決定までには曲折が予想される。同省は法人化の意義を、自らの権限と責任で大学運営に当たることが可能になり、組織編成や予算執行などの運営面で国の規制が緩和され各大学の自主性・自立性が拡大、個性化が進展する−−と強調している。法令に規定すべき特例措置として(1)効率化を進める中期目標を主務大臣が定める際に各大学からの事前の意見聴取義務を課す(2)教育・研究などでの効率化を評価するため主務省に置かれる評価委員会は「大学評価・学位授与機構」(仮称)の評価結果を踏まえて評価を行う(3)学長の任免は大学からの申し出に基づいて主務大臣が行う−−などを挙げた。
 独立行政法人通則法では人事、事業評価について主務大臣の権限が大きく、国立大学への特例措置が個別法で可能なのか別の特別法が必要になるのかは今後、検討する。
 このほか教育・研究用の土地、建物は原則として現在のまま法人に引き継ぐこととしたが、授業料を独自に決めることや、土地処分収入などを原資とする基金設置など財政面の整備は検討課題とした。国立学校特別会計が抱える巨額な債務の取り扱いは、国立病院などの「先行独立行政法人化機関の例を見ながら検討する」と先送りした。

(解説)
反対一転、条件闘争へ

 文部省が二十日明らかにした国立大の独立行政法人化案は、大学の自治を確保する特例措置が前提条件。法人化反対から条件闘争に方針転換したことを意味する。国立大法人化は、文部省が「効率性追求は教育・研究水準の低下につながる」と抵抗。「大学改革の一環として検討し、二〇〇三年までに結論をを得る」と先送りされたが、政府の国家公務員大幅削減計画のため、来夏の概算要求までに決断せざるを得なくなった。その中で、あえて政府、自民党の了解を得ずに案を大学に示し、公表した背景には「先手を打ってアピールし、制度整備で主導権を握らないと、要望も間いてもらえないのではないか」(文部省幹部)という強い危機感がある。文部省案の特例措置は、国立大学協会の第一常置委員会がまとめた内容とほとんど変わらない。法人化の是非は別にして、法人化する場合の条件面で認識に大差ははないと言える。だが、政府、自民党がこうした特例をどこまで認めるのかは全く白紙の状態。認められても、教育、研究が評価されずに収入が減り、経営難に陥る恐れがあるため、大学側の懸念は根強い。
 文部省は十月から十一月にかけ、地域ブロックごとに開かれる学長会議で質疑に応じ、理解を求めるが、国立大九十九校全体の合意を得るのはまず不可能だ。合意なき決断となる可能性が強い中、特例をどれだけ実現させ、同時に教育・研究レベルを上げることができるのか。文部省の力量が問われることになる。

(囲み記事)
国立大学の将来は…・・授業料値上げ、統廃合も

 優秀な研究者を高給でヘッドハンティングして看板教授に据えるなど、大学にとって自由裁量が増す反面、文部省の評価で予算を削られる恐れもあり、授業料値上げや大学統廃合につながるケースも。文部省が二十日公表した国立大の独立行政法人化案に基づき、国立大の将来像を推測してみた。現在、文部省に伺いを立てながら決めている学科・専攻の設置や教職員配置、予算の使い道。これが大学の判断で決定できるようになり、大学独自の学科・専攻を設けて重点的に配分することが可能になる。経験年数などによって一律に決まっている給与も、各大学にゆだねられ、優れた研究者を招聘(しょうへい)するため、思い切った高額報酬を提示することもできる。授業料や企業からの受託研究の収入は国庫に一括し
て計上しているが、これも各大学の収入として直接計上されるようになる。しかし受託研究が集まらなかったり、教育・研究に対する文部省の評価委員会の評価が低かったりして予算を削減された大学は、授業料収入に頼らざるをえず、値上げする可能性も出てくる。少子化で、ただでさえ学生集めに四苦八苦する中での値上げは、志願者離れにつながる危険性も。その場合、評価委の評価はさらに下がり、最悪の場合、統廃合されることも予想される。ある国立大学長は「法人化されれば、どうすればもうかるかを、まず考えるようになる。競争社会の中では当然かもしれないが、そんな姿勢で教育・研究に専念できるのか疑問だ」と話している。


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