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大学はどこへ 独立法人化の波紋 (下)
「自治」問われる将来像
高等教育の激変必至
(1999.9.25 [he-forum 149] 日本経済新聞23日)
佐賀大学の豊島です.
日経 9月23日朝刊の記事です。
全大教11回教研集会の写真が次のキャプションで載っています:
法人化の討議をする国立大学の労組、全大教の教職員研究集会(17日、岩手)
大学はどこへ 独立法人化の波紋 (下)
「自治」問われる将来像
高等教育の激変必至
有馬朗人文相が国立大の独立行政法人化を表明した二十日の国立大学学長会議。会場を出てきた河合隼雄国際日本文化研究センター所長は独特の口調で切り出した。
「法人化自体は悪いこととは思わへんよ。ただ、今の国立大学に独立法人をうまく管理できる人間がおるかいな。大学で全部決められるようになったら、かえって悪平等主義がはびこり、なんも決めれんようになるかもしれん」
「私立は経営を前提に運営されてきたが、国立はそんな経験がない。きちんとした経営ができるのだろうか」。加藤幹太滋賀大学長もこう指摘する。
「学長は名誉職」「大学自治というより教授会自治」「大がかりな研究やプロジェクトを輪番制で行うなど各種慣習の横行」「文部省の顔色ばかり気にする」…、国立大学の体質を巡っては様々な批判が繰り返されてきた。文部省の監視と庇護(ひご)の下、ぬるま湯につかってきた国立大学は突然、「自律的経営」という末知の命題を突きつけられ戸惑いを隠せないでいる。求められているのは、徹底した古い体質の改善だ。
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真価を間われるのは国も同じ。太田誠一総務庁長官は「法人化は各大学の自治を高めるため」と強調する。しかし、国の資金一つみても大学からは、「これまでは予算折衝を経ないと何一つできなかった。運営交付金は大学の判断で使えるのだから自主性は強化されるだろう」(有力大学学長)という期待感がある一方で、「財政を通した文部省支配が貫徹する」(浪川幸彦名古屋大学教授)という声も少なくない。
特に、法人化の大きな目玉である「大学評価・学位授与機構(仮称)」や総務省の「審議会」による外部評価制度の導入で大学は再編される文部科学省と総務省の〃二重チエック〃を受けることになる。社会の関心や時流に合わない研究、短期間では成果が出にくい研究などに支障が出るのではないかという懸念は根強い。
法人化に前向きな学長でさえ、「問題は、評価の専門家の少ない日本で皆が納得できる評価ができるか。多様な評価ポイントが必要で、評価手法が固まるには時間がかかる」と語るほど。大学の自治、学問の自由をどう守っていくか、国の責任は重い。
今回の法人化問題は一貫して、行財政改革の枠組みの中で論議されてきたことが、これまでの大学改革論議と大きく異なる。「長期的展望の下、高等教育がどうあるべきかという理念が完全に欠如している。二十一世紀にふさわしい大学のあり方がきちんと説明され、理屈が通るなら法人化も一つの選択かもしれないが、そうした説明が足りなさすぎる」。山田家正小樽商科大学学長は嘆く。
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それでも、法人化が実施されれば、日本の高等教育の激変は避けられない。資金の重点配分で、研究重視型、職業教育重視型、一般教養重視型などへの大学の機能分化が進み、一方で再編統合の波が押し寄せる可能性もある。私立との垣根が低くなれば、国立偏重だった国の高等教育費支出のあり方が問い直される契機にもなるだろう。
行革論機に押し切られる形で法人化容認を決断した文部省は〃パンドラの箱〃を開けたことになる。