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大学はどこへ 独立法人化の波紋 (中)
迷走する文部省
特例措置腰砕け懸念
(1999.9.22 [he-forum 132] 日本経済新聞22日)
佐賀大学の豊島です.
続けて,日本経済新聞,9月22日朝刊(久留米で購読)の記事です.
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大学はどこへ 独立法人化の波紋 (中)
迷走する文部省
特例措置腰砕け懸念
「心配なのは、特例措置の原案に『検討』『方向』『努力』といった表現が多いこと。政治折衝に移った場合、政治家がすんなり通すとは思えない」。大学が重視する項目が無視された場合、どうなるのか」
「原案は非常に〃甘い〃と感じた。こんなもので済むとは思わない。総務庁や大蔵省との折衝の中で、かなり厳しい内容になるのでは」
文部省が二十日、国立大独立行政法人化の条件として示した特例借置。「大学の特性」に配慮したものだが、有馬朗人文相も「政府内で協議するが決してやさしい問題ではない」と認めるように、国立大の学長たちは同省の当事者能力に危うさを感じ取っている。
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特例措置は「学長・教員は実質的に学内で選考」「業積評価は国から独立した機関で」など、人事から財務まであらゆる分野に及び、独立行政法人の共通規範である「通則法」を事実上修正する内容だ。
これに対して「何のために特例措置が必要なのか。国立大だけに認めるには、説得力のある説明、理由が必要だ」(中央省庁改革推進本部首脳)と、早くも文部省の思惑をけん制する声が聞かれる。
「法人化絶対反対」から条件闘争に急転換した文部省だが、行革の政治圧力が強まる中、対応を余儀なくされたのが実情との見方が多い。
法人化に対する文部省の本心をうかがわせる一枚のぺーパーがある。
「我々の認識不足」「無知だった」……。そこには自己批判の言莱が並ぶ。二年前、局幹部にあてて出した〃始末書〃だ。同学部の教官有志は、付属病院の運営について「形式的には病院長が責任者だが実務は文部官僚が支配している」などと指摘。子算執行と事務機構の権限を病院に与えた方が効率化できると、「法人化容認」の構想を表明した。これにあわてた同省が当事者を呼びつけ、半ば強制的に提出させたものだ。
法人化が実現すれば、各大学は教職員と直接雇用契約を結ぶことになる。国立大の事務枢要ポストに官僚を派運し運営を管理してきた同省にとって、東大医学部の批判は当時、タブーに近いものだった。法人化の方針が決まった今でも、同省幹部は「地方大学がその地域だけで雇用をするのには問題がある。行政に精通した有能な人材が必要」との姿勢を変えていない。
「文部省が組織防衛の保身に回り、特例措置の要求は腰砕けに終わるのではないか」との疑念も大学人からは出ている。
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教養教育の解体や大学院の重点化など、同省が進めてきた大学改革は予算配分権を手に「大学の自主的対応」を促す手法だった。学校週五日制、外国人学校卒業生の大学受験資格など、国民の権利義務にかかわる重要施策の多くも省令などの改正で済ませてきた。
しかし問題が省庁横断的な政治課題に及ぶとき、その調整力には疑問符が付く。将来の高等教育のあり方に大きな影響を与える法人化問題をどう決着させるのか。文部省の力量が問われている。