独行法反対首都圏ネットワーク

国立大学の大きな改革像示せ
読売新聞社説(9/21)
(1999.9.21 [he-forum117]9月21日読売新聞社説)

これはまだMLに流れてなかったでしょうか。

小沢
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◆9月21日付・読売社説(2)

 ◇国立大学の大きな改革像示せ◇

 国立大学を独立行政法人化するための検討案を文部省が発表した。来年度早々にも最終決定する方針で、これをたたき台に制度の詳細について本格論議が始まる。
 二十日には国立大学長会議を開き、文相が法人化の趣旨などを説明した。残念だったのは、文部省に、これを契機に国立大学改革を目指すという確固たる姿勢が感じられなかったことだ。
 この問題は、省庁再編に伴う人員削減計画をきっかけに急進展した。経過は確かにすっきりしないだろうが、ことがここに至った以上、文部省には国立大学のあるべき新しい姿を積極的に構築していくという気構えがあってもいいはずだ。
 発表された検討案は、独立行政法人の一般的なあり方を定めた通則法はそのまま大学には適用できないとし、必要な特例を挙げることに力点を置いている。確かに大学の自主性は尊重すべきで、学長の任免権を大学にゆだねる特例などは必要だろう。
 問題は、論点が通則法の示す制度設計の範囲から一歩も出ていないことだ。例えば民間人の経営参加など、幅広く大学の活性化という観点に立てば、通則法の想定以外にも考えるべき策はあるはずだ。
 かつて臨教審は、国立大学の特殊法人化について検討した。結論は出なかったが、いずれ設置形態に抜本的な検討を加えることが必要と答申している。文部省は、人員削減という要請だけでなく、国立大学改革を求める強い声があることを踏まえて、大きな改革像を描く必要がある。
 検討案でもう一つ気になるのは特例が多岐にわたっていることだ。独立行政法人の大きな狙いは、行政が事前チェックから事後チェックに重点を移し、法人の自己責任を明確に問うことにある。その基本構造が特例で骨抜きになってはならない。
 例えば、通則法は業績の評価は公表することとし、総務省に設ける「審議会」に法人の事業改廃についての勧告権など強い権限を与えている。この評価と事後措置について、検討案では専門家による別の機関の判断を尊重する特例を設けるという。
 時の政治や経済の状況に縛られたのでは確かに長期的な教育研究はできない。しかし、学問の活性化、国民の福祉に役立っているかどうかは、必ずしも専門家だけが適正に判断できるとは限らない。過度の聖域化は改革の足を引っ張るだけだろう。
 独立行政法人化は、学生やその親にとってはどんな変化をもたらすのか。検討案にはその視点も欠けている。特に授業料については、各大学の自由に任せれば文科系と理科系で差がつきかねないなどの疑問があるが、回答は示されていない。
 平均すれば、比較的低い所得層の子弟の割合が私立大学より国立大学の方に多いという調査結果もある。高等教育の機会均等の面で、現在の国立大学が果たしている役割は維持されなければならない。
 大学ごとの個性化をどこまで認め、国が関与するのはどこまでか。私立大学との役割分担はどう図るのか。最終決定までに詰めておくべき課題は尽きない。
(9月21日8:57)



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