独行法反対首都圏ネットワーク

独立行政法人化の前提とは
(1999.9.21 [he-forum108]東京新聞社説)

小沢弘明@千葉大学、首都圏ネット事務局です。

以下、9月21日付『東京新聞』社説。
------------------------------
独立行政法人化の前提とは
 国立大学などを独立行政法人とする場合の特例措置について、文部省が示した案では十分といえない。学問研究の自由や大学の自治の観点からさらに練ってほしい。
 国立大学を独立行政法人(独行法人)化する場合、独行法人の原則を定めた通則法のままでは、効率性の強調などのように、大学の在り方にそぐわない内容が多い。このため文部省は、大学の自主性、自律性に配慮した特例法を設ける方向で検討をしてきた。
 有馬朗人文相が国立大学側に示した案では、学長を文相が勝手に任免するのではなく、大学からの申し出に基づいて行うとしている。
 通則法だと独行法人の中期目標は閣僚が指示することになっているが、文部省案は指示する前に国立大学側の意見聴取を義務づけている。こうした考え方そのものに異論はない。
 独行法人化が国立大学にとって望ましいとすれば、それは学校経営という視点の導入を条件に、人事や予算の使途、国費以外の収入の確保、大学ごとの基金の設置・運用などについて、文部省の制約を受けず各大学の責任でできるようになるのが前提だ。
 各大学がそれぞれの責任で経営をするには、実績のある外部の経営専門家を幹部として任用するとか、世界的に著名な学者を教育公務員の給与規定にとらわれず高給で招くといった人事上の自由がなければなるまい。
 学部の新設や統廃合、教員の増減、学際的研究プロジェクトの設定、外国を含む他大学との交流活動、単位交換などを機動的に行えるよう、大学自身の決定権は幅広いほうがいい。
 少子化の中で大学が成長を続けるには、それぞれの独自性や特質を伸ばし、広く社会から評価されることが求められる。
 独行法人化は、そのための手段の一つだ。その角度からみると、文部省の特例案はまだ徹底していない。
 例えば、独行法人の人事制度については、各大学で「基本憲章」といったものを制定し、学長の選考方法を含めてそれぞれにルールを決めるほうがいい。少なくとも、通則法の定める閣僚によるトップの解任権を、大学には適用しないと明示すべきだ。
 文部省は、授業料や入試検定料については今後の検討課題としているが、独行法人の趣旨からは各校の自主決定にまかせるほうが望ましい。
 独行法人になると、国の予算支出を減らされるのではないかという不安が、大学側にある。
 わが国の高等教育への公的支出は国民所得の一%で、ドイツの二%、英国一・八%、米国一・四%などと比べて低い。国は公的支出の拡大と配分の公正に努めてほしい。
 地球規模の大競争時代に、日本がよって立つ基盤は「知」である。大学が「知」を創造する場であるためには、公正な評価を担保として教育と研究の自由を保障しなければならない。
 国立大学独行法人化の中身が、通則法と大きく違っても、国はあえて認める度量を持ってもらいたい。


目次に戻る

東職ホームページに戻る