独行法反対首都圏ネットワーク |
人事、研究評価で自治尊重
国立大学の独立行政法人化問題 文部省案を公表
(1999.9.21 [he-forum103]Re: [he-forum 99] 再度のお願い。)
熊日99,9,20夕刊
人事、研究評価で自治尊重
国立大学の独立行政法人化問題 文部省案を公表
国立大学の独立行政法人化問題を検討していた文部省は20日、人事や研究・教育に対する評価での自治の尊重など大学の特殊事情に配慮した特例措置の制定を条件に法人化を進める文部省案をまとめ、有馬朗人文相らが同日の国立大学長が参加した会議で説明した。今後、国立大学協会や政府、与党と調整し、2000年4月をめどに独立行政法人化を決める方針だ。
文部省案は特例措置のほか、99の国立第をそれぞれ一法人とし、職員の身分を公務員型にするなど、現在の形態に沿った内容。
自民党からは破約も「抜本的な見直しをする気が本当にあるのか」との厳しい声が上がっており、決定までには曲折が予想される。
同省では法人化の意義を、自らの権限と責任で大学運営に当たることが可能になり、組織編成や予算執行などの運営面で国の規制が緩和され各大学の自主性・自立性が拡大、個性化が進展するーと強調している。
法令に規定すべき特例措置として・効率化を進める中期目標を主務大臣が定める際に各大学からの事前の意見聴取義務を課す・教育・研究などでの効率化を評定するため主務省に置かれる評価委員会は「大学評価・学位授与機構」(仮称)の評価結果を踏まえて評価を行う・学長の任免は大学から申し出に基づいて主務大臣が行うーなどを挙げた。
独立行政法人通則法では人事、事業評価について主務大臣の権限が大きく、国立大学への特例措置が個別法で可能なのか別の特別法が必要になるのかは今後、検討する。
このほか教育・研究用の土地、建物は原則として現在のまま法人に引き継ぐこととしたが、授業料を独自に決めることや、土地処分収入などを原資とする基金設置など財政面の整備は検討課題とした。国立学校特別会計が抱える巨額な債務の取り扱いは、国立病院などの「先行独立行政法人化機関の例を見ながら検討する」と先送りした。
先手を打ち主導権狙う
解説
文部省が20日明らかにした国立大の独立行政法人化案は、大学の自治を確保する特例措置が前提条件。法人化反対から条件闘争に方針を転換したことを意味する。
国立大法人化は、文部省が「効率性追求は教育・研究水準の低下につながる」と抵抗。「大学改革の一環として検討し、2003年までに結論を得る」と先送りされたが、政府の国家公務員大幅削減計画のため、来夏の概算要求までに決断せざるを得なくなった。
その中で、あえて政府、自民党の了解を得ずに案を大学に示し、公表した背景には「先手を打ってアピールし、制度整備で主導権を握らないと、要望も聞いてもらえないのではないか」(文部省幹部)という強い危機感がある。
文部省の特例措置は、第一常置委員会がまとめた内容とほとんど変わらない。法人化の是非は別にして、法人化する場合の条件面で認識に大差はないと言える。
だが、政府、自民党がこうした特例をどこまで認めるのかは全く白紙の状態。認められても、教育・研究が評価されず収入が減り、経営難に陥る恐れがあるため、大学側の懸念は根強い。
文部省は10月から11月にかけ、地域ブロックごとに開かれる学長会議で質疑に応じ、理解を求めるが、国立大99校全体の合意を得るのはまず不可能だ。
合意なき決断となる可能性が強い中、特例をどれだけ実現させ、同時に教育・研究レベルを上げることができるのか。文部省の力量が問われることになる。