独行法反対首都圏ネットワーク

社説 独立行政法人化で改革に弾みを
(1999.8.29 読売新聞)

 国立大学の独立行政法人化へ向けた動きが急を告げている。各大学はなお消極的な構えだが、法人化は大学改革を一気に加速する一つの契機になり得る。チャンスとらえて、前向きに論議を進めたい。
 文部省は来月にも一定の結論を出す意向とと見られているが、確かにこれまでの経過 を見れば、各大学が釈然としない思いにとらわれるのは理解できる。省庁再編に伴う人員削減計画が、国立大の独立行政法人化を前提に組み立てられているからだ。
 独立行政法人通則法で定められた枠組みも多くの矛唐を抱えている。政府から独立した法人なのに、職員が国家公務員のままという特定独立行政法人を認めることになったのがその典型と言っていい。
 一国の将来がかかった高等教育機関のあり方を、行政改革や財政といった観点からのみ論じるのはいかがなものか。しかも、あまりにもご都合主義にすぎないか。そうした批判は大いに説得力を持つ。
 ただ、法人化の圧力が強まっている背景に、遅々として進まない大学改革への社会のいらだちがあることもまた事実だ。経過の適否はともかくとして、法人化によって改革の方向へベクトルが働くにかどうか、つぶさに検討してみる必要はある。
 まず、マイナス面としては、通則法の枠組みで、そのまま国立大学には適用できない要素がいくつかある。
 通則法では中期目標を主務大臣が指示することになっているが、教育研究にこの法律が求められている数量的な目標がふさわしいとは思えない。総務省、所管省庁による評価制度についても、教育研究分野については一定の配慮が必要になってこよう。
 学長の任命権は通則法によれば大臣に属する。しかし、現在は教育公務員特例法によって大学での選任が認められている。大学の自治を巡る歴史的な論議を踏まえれば現行制度を維持する工夫が必要だろう。
 個々の独立行政法人の設立にあたっては通則法のほかに個別法を制定することになっている。文部省は既に腹案を持っているようだが、これらの問題は個別法に特例を示すことで解決が図れるはずだ。
 一方プラス面では、第一に財務会計の独立が挙げられる。細かい費目に分けられ、一年で使い切らなければならない文部省の予算から解放される。大学が自身の計画に沿って、国からの一括出資金を自由に配分できることになる。民間からの研究費なども調達しやすくなるに違いない。
 現在、文部省の全国人事で異動している幹部事務職員も、法人化されれば定着が進み、文部省の影響力が弱まる。行政の事前チェックが事後チエックヘと変わり、組織として動きやすくなるだろう。
 一つ間違えると、破たんの恐れもないわけではない。しかし、こう見てくると、通則法をそのまま適用するのでなけれは、独立行政法人化は国立大学を大きく変える可能性を持っていることが分かる。
 自己変革なき大学に未来はない。少子化時代を迎えた今日の、それが常識であることを、各大学は思い起こしてほしい。


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