大学において急増する非正規雇用の教職員:実態調査と資料提供のお願い

2008年6月8日 国立大学法人法反対首都圏ネットワーク事務局

非正規雇用者は社会全体で増え続け、全労働者のなかに占める割合は33.5%と既に3分の1を越えています(男18.7%、女54.0%、2007年総務省「労働力調査」)。この非正規雇用者の急増が生み出す深刻な諸問題については既に多くのところで指摘され、労働組合側からの反撃も開始されているところです(たとえば「格差社会にいどむユニオン」木下武男、2007年、花伝社)。

では大学はどうなのでしょうか。既に行政職の分野においては少なくない国立大学の職場において非正規雇用者数が正規雇用者数を上回っています。派遣労働者も拡がっています。教育の分野においても多数の非常勤講師という非正規雇用者によって辛うじて維持されています。加えて、近年、様々な形で雇用されている若手研究者も急増しています。現段階で正確な統計はありませんが、国立大学における非正規雇用者数は優に半数を越え、国立大学は非正規雇用者の率が異常に高い組織であると推定されます。こうした非正規雇用者の率の異常な高さは、実は、国立大学における極めて歪んだ雇用関係によってもたらされているものです。

第1に、国家公務員時代に形成された非常勤職員制度が強固に維持され、低賃金、権利上の差別、3〜数年の雇用期限など、民間のパートタイマー労働者よりも悪条件での労働が強いられている場合が数多く認められます。

第2に、法人化後、雇用の原資が多様化したことと対応して、有期雇用、年俸制、裁量労働制を軸とした多様な条件による雇用が主として若手層を対象に拡がっています。しかしその現実は、「高学歴ワーキングプア」(水月昭道、2007年、光文社新書)と呼ばれる劣悪な労働環境です。そうした中で、研究室単位での研究補助要員、若手研究者ならびにその予備軍の雇用には不透明な例が数多く報告されています。人件費に回すことのできる予算を握る「ボス」が事実上の雇用者として振る舞い、労基法等の労働法制を無視したアカデミックハラスメントの温床を形成しているとの指摘もあります。

非正規雇用者をめぐる上記の状況は、正規雇用者の雇用・労働条件不安定化の動きとも密接にリンクしています。例えば、執拗に繰り返される任期制導入の圧力、現行給与表体系とは異なった年俸制体系の拡大の動きなどがそれにあたります。こうして働く人々全体の雇用を不安定化させ、互いに競争させ、人件費を極限まで切り下げる路線の推進が加速されているのです。

運営費交付金の逓減が強行され、2010年から始まる次期中期目標期間においては運営費交付金そのものの競争的配分が企図されている現在、各大学の生き残りをかけた競争の中で、非正規雇用の拡大とその労働環境の劣悪化はいっそう強まっていくとみなければなりません。このような状況に私達は真正面から対峙し、将来へ向かって安心して働くことのできる職場をつくる、そのことが大学における教育研究活動発展の重要な基盤構成要素となるという運動を対置しなければならないと思います。そのためには、各大学における非正規雇用の実態を正確に把握し、分析する作業をまず行わなければなりません。

本事務局は、非正規雇用者が劣悪な労働・雇用条件におかれていることに憤りを抱き、かつまたそのような雇用が急増していることに深い懸念をもっておられる全国の大学の方々と力をあわせて、現状分析と打開方策提示に取り組みたいと思っています。是非、各大学、研究機関ごとに以下の情報・データ等を部分的で結構ですからお寄せ下さいますようお願いいたします。

1.非正規雇用者にかかわる就業規則。雇用条件、給与条件等の諸規程
2.雇用条件等を中心にして非正規雇用者をカテゴリー分けしたものとその名称。カテゴリーごとの人数、年令構成など
3.非正規雇用者にかかわって起こっている諸問題の実例

データは本事務局まで電子情報で送っていただければ幸いです。アドレスはinfo@shutoken-net.jp(@を半角にして用いてください)です。夏には第1次の集約結果をご報告したいと思っています。本事務局も自ら、これらの情報・データ等の独自の収集・分析によりこの運動に資する所存です。