『山形新聞』2008年4月12日付

2010年度に向け教養教育再構築 結城山形大学長が方針語る


山形大の結城章夫学長は11日、山形新聞のインタビューに答え、2010年4月の実施に向け、教養教育のカリキュラムを全面的に見直していく方針を明らかにした。また、各学部にインセンティブ経費を振り分けるため、経営協議会に組織評価の役割を重点的に担ってもらう考えも示した。以下は一問一答。

−運営交付金の減額、総人件費改革の影響など、大学運営は厳しい時代を迎えている。結城学長は昨年10月の就任以来、学生が主役となる大学創(づく)りを掲げてきた。その意図は。

「教職員の意識改革を迫る意味合いもあった。大学は学生のために存在するというのは、極めて誰でも納得できる常識論だと思う。しかし、場合によっては、大学は自分のためにあると誤解している教職員がいる可能性があると思った。その意識改革を図るための狙いもあった」

−教養教育の充実についても力を入れているようだが。

「任期中の最大の仕事は、教養教育の再構築と思い定めている。山形大学の教養教育が全く不合格というわけではないが、今のままでいいとは思わない。どの程度の規模で行うかは、これからの検討となるが、根幹から思い切って改革するつもりだ。ボトムアップで議論を積み重ねる手法では大きな改革はできず、学長として積極的に提案していく。改革の方向性は教育研究評議会で決定するが、5月の評議会に『教養教育の課題と改革の方向性』について学長提案する方針だ。提案するためのブレーンとして、来週にもワーキンググループを発足する。本年度内に学内合意を得て、09年度に準備、10年度に新しい教養教育のカリキュラムを実施する予定だ」

−大学の意思決定のスピードアップ、事務手続きの簡素化にも取り組んでいるようだが、具体的な成果は。

「大学はこれまで、学内で議論を尽くすというのが文化だった。この手法は確かに大事だが、財政が厳しくなる中で、大学経営は早期に結論を出し、行動に移さなければ成り立たなくなっている。現在は学長、役員会を中心に物事を決めることにしており、意思決定のスピードアップは図られているはずだ。事務手続きは、法人化後も国の機関だった時代のルールを引きずっており、切り替えが徹底していなかった。そこで、さまざまな規定や手続きを見直し、先月までに100以上の改正を行った。さらに、今年7月には、小白川キャンパスの事務体制を見直すことにしている。本部事務局は大学全体の事務に専念することでスリム化し、各学部などキャンパス内の事務は新たに事務センターを設け、集約する方針だ」

−主に大学の経営に関する事項を審議する経営協議会は、有馬朗人日本科学技術振興財団会長や吉本高志大学入試センター理事長ら学長経験者2人が加わるなど、新たな体制となった。どのような議論を期待しているのか。

「経営協議会は大学にとって重要な機関だが、議論が形骸(けいがい)化している印象を持っていた。予算や事業計画など、決めなければいけないことがたくさんあり、山形大学がどうあるべきかという本質的な議論が不十分だったのではないだろうか。改善策として、これまで年4回だった協議会の開催を、本年度から年6回に増やすことにした。また、学部の組織評価を重点的に担ってもらうつもりだ。どの学部が頑張っているか、組織に順位を付け、インセンティブとして5000万円の中から配分することにした。かなり難しい評価作業となるが、これができるメンバーとして人選した結果、かねて尊敬している有馬さんと、東北大学長として人物を知っていた吉本さんに就任してもらうことにした」