『河北新報』2008年3月16日付

半導体研 東北大に寄贈 新たな研究拠点に


米国シリコンバレーをモデルに、産学連携の先駆けとして、半導体産業の発展に貢献してきた仙台市青葉区の半導体研究所が、東北大に寄贈されることが決まった。東北大100周年の記念の意味もあるという。研究所を運営する財団法人半導体研究振興会(緒方研二理事長)は31日で解散する。

振興会は1961年に大学関係者と産業界が協力して設立し、研究所施設は2年後に完成した。産学協同による独創的な研究への助成、卓越した研究者の養成を進め、半世紀近くにわたり半導体分野の先端研究をリードしてきた。

特に、名誉所長で元東北大総長の西澤潤一首都大学東京学長が長年にわたり研究を指導。半導体表面の一部を絶縁層にするpinダイオードの開発をはじめ、SIT(静電誘導トランジスタ)、テラ(1兆)ヘルツ波などに関する数々の発明は国際的に高い評価を受けた。

近年は東北大の未来科学技術共同研究センターなど、学内に産学連携拠点を開設する大学が増える一方、バブル崩壊後は企業からの資金提供が減少。施設を維持する財政的な問題もあり、2004年に研究棟1号館を東北大に寄贈した。

振興会の解散は「産学の共同研究支援という所期の目的は達成された」(須藤建・半導体研究所所長)として決定、一括して東北大に寄付することにした。

施設は約18万4000平方メートルの土地、研究棟や工場、備品などで、91件の特許権を含めた財産評価額は総額約24億円と見込まれる。所属している11人の研究員は、大学や民間の研究機関に転出する。

東北大は4月以降、学内の共同研究施設として活用する方針。研究所の先端研究をけん引してきた名誉所長の西澤氏の功績に敬意を表し、「西澤潤一記念研究センター」などの名称も検討されている。

井上明久総長は「貴重な研究施設の寄付を受け、光栄に思う。大学としてさらに設備を整え、有効に利用していきたい」と話している。

[半導体研究所] 西澤潤一元東北大総長と、その恩師の故渡辺寧氏がpinダイオードなどの特許を寄贈して設立された。大学と企業の橋渡し的な役割を担う米シリコンバレーのスタンフォード研究所をモデルとした。1961年の開設時は、事務所を東北大電気通信研究所内(仙台市青葉区片平)に置き、63年に東北大川内キャンパス(青葉区川内)近くに研究棟が整備された。現在の研究棟(青葉区荒巻)は88年に2号館として建設された。