『高知新聞』 2008年3月1日付

学長選考訴訟 高知大側 争う姿勢
高知地裁第1回弁論 「票のすり替えない」


高知大学の相良祐輔・現学長の再任を決めた昨年十月の学長選考会議の決定は無効だとして、対立候補の高橋正征氏=高知大大学院黒潮圏海洋科学研究科長=が高知大を訴えた訴訟の第1回口頭弁論が29日、高知地裁で開かれた。大学側は全面的に争う姿勢を示し、大学トップの選考と学内自治の在り方をめぐる異例の法廷対決が始まった。

訴えによると、学長選の学内意向投票は高橋氏が相良氏に41票差をつけたが、作業後、投票用紙を独断で整理していた職員が「相良氏の20票が高橋氏の投票箱に混入していた」と指摘し、数え直すと、両氏の差は1票になった。何者かが(相良氏再任のため)票をすり替えたとしか考えられないのに、選考会議は投票数を確定させることなく、混入前と後の2つの投票結果を基に選考した。これは違法で重大な手続き違反だ−−としている。

弁論で、大学側は「最終的に学長候補を決めるのは選考会議で、意向投票は参考にすぎない。第1次学長候補者の高橋氏に意向投票の結果が尊重されることを期待する法的権利はなく、原告としての適格性はない」と主張。票の混入について、「投票用紙の数と投票総数が一致しており、すり替えの可能性はない」とした上で「(高橋票の箱から相良票が見つかったのは)投票管理委員長が箱の中を十分確認しないまま集計した可能性が高い」「意向投票の結果をどう扱うかは選考会議の裁量。2つの投票結果を参考にしたことに違法性はない」とし、投票結果にかかわらず選考会議の決定が優先するとした。

訴訟では今後▽高橋氏に「原告適格」があるかどうか▽選考会議決定に裁量権の逸脱があるかどうか−−が争点になる。

この学長選考過程をめぐっては「何者かが票を差し替えた」として、同大教授らが偽計業務妨害と公用文書毀棄(きき)容疑で、被告発人不詳のまま高知地検に刑事告発もしている。

原告 高橋氏 「大学に民主主義を」

学長選考過程をめぐって学内が分裂し、深刻な対立が続く高知大学。高知地裁での29日の第1回口頭弁論で、学長選考のやり直しなどを求めた教授や学生らと、相良祐輔学長の再任手続きを進めてきた大学職員らが顔を合わせた。

「(国立大学の法人化は)閉鎖的になりがちな国立大学の運営を社会に開くためだった」。傍聴席を背に原告の高橋正征氏は、法人化後初の学長選考を「大学運営の透明性、学内外への説明責任から著しくかけ離れた出来事」と批判。意見陳述の最後を「多くの教職員と学生の不信を代弁する。問うているのは『大学の民主主義』」と締めくくった。

傍聴席には、学内意向投票の開票と再集計作業に携わった被告側の大学職員らの姿も。学長選考の過程をめぐる弁護士らのやりとりに、じっと腕を組んで聞き入った。

大学側によると、この日、相良学長は学外での会議に出席。同大の河本朝光事務局長は「係争中なので何もコメントできない。すべて弁護士に任せている」と話した。