『高知新聞』2007年12月27日付

「誰がなぜ?」捜査を
弁護士11人が支援


高知大の現学長、相良祐輔氏の再任を決めた学長選考会議の決定をめぐり、26日、同大の教授らが異例の刑事告発に踏み切った。告発後に行われた記者会見では、弁護団が「誰が、どうかかわったのか」と意向投票の“異常さ”を強調。「本来は学内で解決すべき問題」を法廷の場で追究することとなった教授と学生らからは、苦しい胸中を吐露する言葉が続いた。

「一般の選挙でも、選挙管理委員会の了解なしに事務局が票を開けることはあり得ず、今回のような事態は聞いたことがない」「投票をやっていないと同じか、それ以上にひどい結果だ。最高学府の学長を決めるのがこれでいいのか。大変な懸念がある」

問題の意向投票について、弁護士の1人が声を上げた。「問題の大きさを受け止めた」として民事訴訟には11人の弁護士で弁護団を構成。刑事告発の告発人にも、同大教授3人とともに11人全員が名を連ねた。

告発状によると、「犯行」は▽相良氏の学長再選を熱望していた被告発人が、最初の得票数が確定した時点で同氏再選に危機感を抱き、1束(20票)の入れ替えを実行すれば票差が1票差に縮小すると考えて▽自ら票を管理し、秘書課金庫を開閉しうる立場にあることを利用した。

会見で弁護団は「票をすり替える時間的余裕は十分にあった」「誰がどういう理由で、どうかかわったか。捜査で明らかにしてほしい」と強調。

真相究明を求めてきた教授らは「本来、大学内部で解決すべき問題。そのための努力もしたが、納得のいく答えはなく、一向にらちがあかなかった」「非常に苦しい立場だが、(告発と提訴を)させていただいた」「誇りをもって働き、学べる高知大にするためだ」などと心境を明かした。

さらに、公開の場での説明を求めて2085人分の署名を集めた学生有志の代表も、「自分たちの大学が訴えられてしまうのは悲しいが、そのような手段もやむを得ないと思う。大学にはより良い方向に向かってほしい」と述べた。

国立大学法人移行後の学長選考をめぐっては、滋賀医大や新潟大などで民事訴訟が起きているが、これらは意向投票の結果を覆した判断の違法性を問う内容で、開票作業を含めた選考過程全体の正当性が争点となった例はない。まして刑事告発は全国で初めて。

一連の問題について弁護団は、今年7月の山形大学長選考で文部科学省の前事務次官が学長に決まったことが天下りだと批判されていることを例に、「高知大だけの問題ではない」と強調する。同大の不透明な学長選考過程を明らかにし、国立大学法人の学長選考のあり方に一石を投じることになるかどうか。法廷での行方が注目される。