『高知新聞』2007年11月21日付夕刊

高知大を想う−−歴代学長に聞く 5 池田 久男氏
決まった人を支援する


国立大学法人に生まれ変わる半年前、高知大はそれまで経験したことのなかった大きな変革を体験した。平成15年10月、医科系単科大だった「高知医大」と統合し、教育、人文、理、農、医の5学部に再編。それは両大にとって、法人化に向けた、生き残りをかけた選択肢だった。このとき「新生」高知大の初代学長に選ばれたのが、現学長の相良祐輔氏。高知医大副学長だった相良氏に統合後の大学運営を託した、高知医大最後の学長、池田久男氏に話を聞いた。同氏は「OBがとやかく言うことは避けたい。電話でなら・・・」とした上で取材に応じてくれた。

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現場を離れて久しく、今回の学長選考のことも新聞報道でしか知らない。「何か学内で混乱が起きているのか」というぐらいの認識で、収まるところに収まるだろうと思っていた。

わたしは高知医大の最後の学長で、高知大の学長は務めたことがない。参考になることは話せないと思うが、そもそも、医大と高知大では規模も文化も歴史も違い、朝倉キャンパスと岡豊キャンパスでは学生気質も全く違う。

医学とは限られた専門分野を突き進む学問であり、学生は医学部卒業後、医師になる道を選ぶ。一方、総合大学に通う学生にはいろいろな進路がある。「同じ国立大だから」と思うのは間違いだ。その2つが統合したのだから、大学運営が難しいのは当然だろう。

それに、医大との統合前の高知大と国立大学法人になってからでは、学長選考のルールが全く違う。以前は学内選挙により学長を選んでいたが、今は選考会議が決める。今の高知大の状況に、大学の教職員や学生らが何らかの疑問を持っているのであれば、それはそれで納得するまで声を挙げたらいいと思う。

しかしOBとして言えるのは、次期学長は教授や理事、選考会議の委員を含めてあくまで現役の人たちが責任を持って選びなさい、ということ。「過去の人は(後に続く人に)重圧を掛けてはいけない」というのがわたしの哲学。

そうやって決まった人を全面的に支持し、応援するのがOBの役割。今の時点で口を出し、新たな火種をつくるのは良くないと考えている。


いけだ・ひさお   岡山大大学院医学研究科修了。同大医学部講師、助教授を経て昭和54年高知医大神経精神科教授。副学長、付属病院長を経て平成10年、5代学長に。最後の高知医大学長として高知大との統合に当たった。現在は土佐市民病院で外来診療を担当。県精神保健福祉協会会長。こうち被害者支援センター理事長。76歳。