『高知新聞』2007年11月16日付夕刊

高知大を想う−−歴代学長に聞く 1 中内 光昭氏(上)
候補者選びからやり直しを


高知大学が国立大学法人移行後行った初の学長選考が、学内外に波紋を広げている。現学長の相良祐輔氏と同大大学院黒潮圏海洋科学研究科長の高橋正征氏の2人の次期学長候補のうち、学長選考会議は先月17日、相良氏の再任を決めた。しかし、同会議がその判断材料の1つとした学内意向投票は「ミスか不正があった」とされ、2通りの得票数(いずれも高橋氏が1位)が判明するなど不透明さをぬぐえない。これに対し、複数の学部教授会や学生有志が真相究明や選考やり直しを求めているが、選考会議は選考を白紙に戻す考えはないという。事態を収拾する手だてはないのか。一連の学長選考をめぐる混乱をどうとらえ、何を想うのか。同大の歴代学長に聞いた。
(高知大学長選考取材班)

高知大学は全国の国立大学の中で、旧制高知高校時代からの自由な気風と言うか、大学の自治が大切にされる学園だった。現場の教職員の声を大事にする伝統が引き継がれてきた。そこがほかの大学にはない、特徴だった。

それが今回の学長選考問題で傷ついてしまったように感じるし、大変恥ずかしく思う。少なくとも学長選考会議には意向投票の結果を尊重してほしかった。

意向投票には、いろいろ問題があるが、現場の教職員の半数以上が自分以外の候補に賛成しているなら、私ならとても学長はできない。本人が良かれと思ってやっていても、それが理解されていない、ということだから。そんな状態で学長を続けても、学内が1つにまとまることは不可能に近い。今回の意向投票は、現学長への信任投票の意味があったように思う。私が今の学長の立場なら、3月末まで任期いっぱい務めてから辞めるだろう。

仮に今の学長がそうされた場合、そのまま対立候補を次期学長にというのではなく、できれば、最初から、候補者を選定するところから、やり直すことだ。それが今の高知大のためには一番いい。元学長としては、そう言いたい。そうすることが、学内に大きなしこりを残さないで済むことにもなるのではないか。意向投票では、(2種類の得票結果が判明して)票数がどうこうと言われているが、非常に恥ずかしい。三流大学と言われても仕方ない。

私も過去に学長選の委員を何度か務めたが、開票作業は、それはピリピリした中で行われた。一票たりとも間違えることはあり得ない。それだけ神経を使っていた。

今回のように、いったん確定した票を事務局が開けるなどということも、とても考えられない。その必要があれば、委員長の立ち会いの下で行うのが常識だ。

学長選考会議の構成などを見ると、「お友達内閣」という言葉を思い出す。意向投票の結果とは違う候補を選び、学内民意を否定するのであれば、納得のいく説明が必要だ。今のままでは学内に不協和音が広がるのは当然だと思う。

なかうち・みつあき  東京教育大学(現筑波大学)大学院修了。昭和38年に高知大文理学部助手となり、附属臨海実験所(現・海洋生物教育研究センター)に勤務。同センター長を経て62年に理学部長。平成元年に第7代学長に就任。4年に再任され、7年9月まで6年間学長を務めた。77歳。