国立大学法人東京芸術大学の研究教育条件の向上についての陳情 台東区議会議長 木下 悦希 殿 陳情者 東京芸術大学教職員組合 代 表 台東区上野公園12−8 執行委員長 杉木 峯夫 本年、東京芸術大学は創立120周年を迎えます。日頃より、東京芸術大学の教育と研究へのご理解とご協力を賜り、誠に有難く存じます。今後も地域社会に様々な形で貢献していきたいと考えております。 この間、国立大学は、2004年度(平成16年度)の国立大学法人化以降、毎年1%の予算(運営費交付金)が削減されています。 東京芸術大学の場合、毎年度の予算(運営費交付金)削減額は約5000万円に相当します。この4年間で約2億円の予算が削減されています。予算(運営費交付金)が東京芸術大学の教授会資料(概算)では、運営費交付金削減率5%の場合、入学料・授業料値上げ(現行の1.14倍)。入学料(現行282,000円→321,480円)、授業料(現行535,800円→610,812円)。現在の合計817,800円が932,292円に変更した場合、年間114,492円の値上げです。なお、削減率約86%の場合、入学料+授業料は年間で2,706,918円。現在より1,889,118円も値上げすることになります。現在の3.31倍の負担増です。これでは「格差社会」は拡大するばかりです。 財務省作成資料では、国立大学予算を競争的経費化した場合、東京芸術大学予算(運営費交付金)は約85%も削減され、約15%の予算では経営が成り立たず、「国立大学の再編・統合」の道を選択する可能性は高くなるでしょう。 具体的に、現在の東京芸術大学の教育研究条件について、「現場の声」をご紹介します。 「現場の声」 「人物モデルの要請も、コスト的に制限がかかり、要望に応えられない、応えてもらえない」 「学生対応各窓口においても、たらい回しに合う等の不満多し、人員不足からの影響そのもの」 「大学食堂、学内ショップの充実度は低く、美大レベルではない。あまりにも他大学との差が大きく、学生、教職員の不満が多いのは運営上の資金不足ではないか」 「美術館、博物館等入館料も、教職員割引すら不十分で、美術大学としての待遇不足は、やはり予算の影響と思えて仕方がない」 「美術大学にもかかわらず、施設設備の状況問題が解決せず、技術排水(オイル系洗浄浄水、印刷版画インク洗浄浄水、釉薬排水、各種塗料系洗浄水等)、絵の具すら処理に困難なのは、情けない」 「各科、入試や機密等の大事なデータを扱うにも関わらず、処理するシステムのメンテナンス費用も捻出できない」 「学生及び教員研究者の、必要頻度の高い工房なのに旧型機械。効率低下と安全面での不安は、一向に変わらず、悪化するばかり」 「教授、助教自ら指導以外の管理事務業務が多大で、研究どころではない。しかし、国からの運営費交付金では事務対応の雇用は無理である」 「教材の充実度からすれば、元国立美大にしては、あまりにも微弱ではないか。学生からの充実を求む声も多大」 「学事において教職員の出勤があっても、手当も出ない。決められた時間数で、これまでの仕事量では若手には特に大変な痛手。残業代計算とかの問題ではない。みんな身を削ってでも我慢している。自分の研究以外のことです。学生の世話をしていれば、管理業務は出来ないし、事務がらみの仕事をしていれば、担当業務は夜中になるし、明日、今度、 後でやりますが、無理な状況」 「これまでの人員削減でギリギリいっぱいで管理運営しているのに、これ以上の削減はあり得ない。むしろ常勤教員の補充がないと学生対応と教員研究はままならない」 「学生の要望に応えられる学内印刷機器は対応不足。学内の一部では、授業配布資料のコピー代ですら、学生から徴収しなければならない状況」 「学生及び教員研究者の、必要頻度の高い施設なのに旧型パソコン。作業効率の悪循環」 「壊れた机や椅子も、新規の購入が出来ず、学生が自ら修理して我慢している」 「各科、大型設備、大型機器、大型重機等は、新規はもとより、修理費もままならないゆえ、故障箇所ありきで使用するしかない状況」 「空調設備も成り立っていない場所では、夏期冬期授業においては特に学生の集中力低下が見られる。学生からの非難も多々あり」 「守衛警備の人員削減も、手薄になった対応、見回りに影響があるのがわかる。不審者注意を教員に促す前に、管理体制の充実が必要なのではないのか」 「キャンパス内、屋外環境においても、整備不十分を感じる。舗装面、グラウンド整備、清掃業務。構内壁の掲示禁止前に、対応策の確立ではないのか。グランウドやデッキには、使用規約のわりに誰も整備していない。自転車、バイクも放置禁止。ナンバー登録手続きをしても、スペースの管理は誰もやっていない。勝手に切れぬ植え込み、勝手にいじれぬ舗装や水たまりもずっとそのまま放置されている。中型廃棄物も、学内予算での購入品は許可で、学内予算がないから自前で買ってきたり、持ち込んだものは、業者を呼んで自腹で処理しろと言われています」 「教員数の削減により、ある共通施設では、常勤講師の負担が大きい。学生への対応は手薄になり、学生からの不満も多い。運営においても学生徴収金を資金にまわすしかない」 「芸大には私費留学生が約90人います。しかし、留学生寮は入寮期間制限があり住居の心配や不安が問題になっています。芸大の資金不足から、留学生会館や学生寮の拡大ができない。 具体的には、芸大の国際交流会館(千葉県松戸市)は定員約40名です。希望者全員の入居が難しいです。芸大石神井寮(練馬区)も決して便利ではない。お台場に日本学生支援機構の寮がありますが、入居枠は約10名分と限られています。そんなところに豪華な寮はいりません。近くのアパートでいいから留学生の支援を行って欲しい。 現在、留学生の経済的な負担は大。苦学生(留学生)への配慮がないゆえ、アルバイトで学業に専念できていない」 「パソコンやソフト等、新規やランクアップがあたり前の時代、旧システムでしかいられず、技術面、スピード面にも支障がある」 「各専攻に提示された学内予算では明らかに不足。外部事業の取り込みを必要以上に強いられ、創作研究へ障害がある。 当然、学生への指導にも障害が出ている」 「研究室又は助教、教育研究助手の使用するパソコンは古すぎて対応できず、自前、自腹で持ち込むしかない」 「スペースはあっても、必要数の机すら用意できない。そんなアトリエが多々あります」 「教育現場にも関わらず、非常勤講師の出勤数まで減らされて、授業の縮小が現状です」 「最先端の機材導入を希望するわけではないが、工房予算が十分でない事で、耐用年数を超えた機材類に措置が施されない。経年変化による故障により、修理経費については別予算でなければ運営できない」 「教育研究助手等や非常勤講師の待遇が不十分。現在の賃金では制作活動はおろか、家庭持ちは人並の生活は送れない。毎日出勤し朝から晩まで学生達と接している人間の待遇が、とても「大学の教員」という扱いではない。若手のモチベーションを下げている。これでは時間外勤務などする気になれないのも当然。無理のある任期制にも疑問を感じる。全て予算総額の影響ではないか」 「この業界、独立を旨とする人間が多い中、育ての美大にも独立生計を強いられる学生が多いはず。彼らにとっては、未だに学費は高額で、支払や生計をアルバイトでまかない、学務の時間が取られている」 「各科各専攻、研究室への研究費枠があまりにも、あまりにも不足ゆえ、学生、教員の自己負担が多すぎている」 「特に大学院の研究スペース、施設の不足は著しく、研究分野の縮小や研究時間の負担になっている」 「未だに上水道の水質は悪く、悪化の一途、水道管等の老朽化は甚だしい。環境の整備は不十分である」 「アトリエ、研究室では、害虫の発生、鼠害、湿気によるカビ、悪臭など、衛生管理もいきとどいていない。とても美術を担う大学ではない」 「室温、湿度を管理も出来ぬ施設ゆえ、美術品を扱っていても、まともな研究や制作にならない」 「各専攻で図書分野も違うのに、研究用の専門図書は不足している。研究費の不足は書籍購入も出来ない」 「助手の出勤数の削減、人員削減は、学生数に対しての対応時間不足に影響がある。賃金不足は、直に学生対応に影響あり」 「学内の郵便局ATM廃止、銀行ATMの不在は、学生生活に負担あり。導入できないままでよいのか」 「専門分野ではなくとも、パソコンシステムは必需品なはずが、大学院ですら学生使用の機器は完備されない」 「施設、工房、設備の老朽化は、貴重な備品・作品の、保持・管理に無責任に対応するしかない」 「学費の免除が少額なのは、申請数が多いからだけではなく、支援額の微小からである」 「授業で使用する楽器及び練習用の楽器を購入することに困っています」 「ピアノの調律回数が減っているので、教育環境は悪くなっています」 「マイク、アンプ、スピーカーなどの音響機器の更新が出来ず、古い機材を使用しています」 「各教室の機材も古いものを更新する予算が厳しいです」 「教育研究用図書の予算が削減され文献や楽譜の購入が減っています」 「教育研究助手の人件費が削減されています。担当者に負担がかかり、結果として、教育研究環境の水準に悪影響が出始めています」 これらのことをふまえ、台東区議会に対して下記事項について陳情する次第です。 陳 情 事 項 下記の事項を国及び関係団体に働きかけること。 一、高等教育への公的支出を現在の水準からOECD(経済協力開発機構)加盟諸国平均GDP比1%にまで年次的に引き上げていくこと。 二、国立大学の財政に関して、効率化係数・経営改善係数等の算定ルールを改善し、国会附帯決議に基づき、国立大学予算(運営費交付金)を増額すること。 三、国立大学の中期目標終了時(2009年度)における評価と資源の再配分にあたって は、公正性・透明性を担保するとともに、高等教育機関としての特性に鑑み、単なる 定量的な評価に陥らないこと。とりわけ、「教育サービスの提供の面だけでなく、地 域社会の知識・文化の拠点としての役割をも担っている」東京芸術大学の位置づけを 踏まえ、その存立を危うくするような措置をとらないこと。 四、教育を受ける権利にこれ以上格差が持ち込まれないよう、学費の上昇抑制と引き下げを進めること。これらにより、学費を段階的に無償化し、国際人権規約における高等教育無償化条項の留保を撤回すること。 |