『朝日新聞』2007年9月10日付

大学の卒業、厳格に 「全入時代」迎え質を確保 中教審


大学の学部教育の見直しを検討している中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)の小委員会は10日、卒業要件の厳格化を政府と各大学に求める審議経過報告案をまとめる。政府には全学部共通で身につけるべき能力の指針を示すことを、各大学には卒業認定試験をするなど責任をもって卒業生の質を確保するよう求める。「大学全入時代」を迎え問題になっている大学生の能力低下に歯止めをかけるのが狙いで、文科省は最終報告書がまとまり次第、具体的な対策に着手する方針だ。

大学や学部・学科の新設を定める大学設置基準は規制緩和が進み、この10年間だけで大学数は586から756に急増した。一方で、82万人いた大学志願者数は69万人に減った。少子化で学生集めが難しくなり、短大は4年制大学に改組し、既存の私大は次々と学部・学科を新設してきた。

その結果、学力試験を課さない推薦・AO入試で大半の学生を受け入れる大学が増加。小委員会では、「このままでは学士という学位の水準が維持できない」という意見で一致し、卒業厳格化の方針がまとまった。

具体策としては、学部教育で身につけるべき能力として(1)日本語と特定の外国語を使って「読み」「書き」「聞き」「話す」ができるコミュニケーションスキル(2)情報や知識を複眼的、論理的に分析、表現できる論理的思考力(3)自己の良心と社会の規範やルールに従って行動できる倫理観――を挙げ、政府には、学習成果の「参考指針」として提示させる。

各大学には、組織的に学生の学習到達度を的確に把握・測定する体制を整えるよう求める。具体的には、学部ごとの特色に応じた学内試験の実施や、TOEICなど外部の試験の結果の活用などを挙げている。